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録音

録音のことについて、いろいろと書いてきましたが、長岡先生の著書に、録音についてのわかりやすい記述がありました。
現在、録音の99%は超オン・マイクのマルチ・モノである。これを鮮度を損わずにミキシングして2chのソースに作り上げた場合、通常のスピーカーで再生すれば、すべての楽器がリスナーの耳から2、3mの距離で鳴っているのと同じになり、指揮台で聴く音どころではないヒステリックな音になってしまう。ミキシング、トラックダウンの際に、鮮度を落としたとしても、距離感の調整は難しい。とすれば、スピーカーの方で距離感を作るしかない。一番いいのは5〜10m離れて聴くことだが、それは不可能なので、ロースピード・タイプのスピーカーを使うとか、スピーカーをうしろに向けて反射音を聴くというのもひとつの手だ。
マイク・でっティングとその後のミキシング、イコライジング、エフェクター処理等によって、ソースは千差万別となっており、こちらの規格統一ができていない以上、万能の理想的スピーカーというものはありえない。特定のソースに大しての理想的スピーカーは考えられるが、考えるだけであって実現は不可能だろう。
長岡先生は、マルチ・モノという用語を使っています。

楽器の近くにマイクをセットして、高域の空間減衰のない音を捉える。
これを、多チャンネルに分けて記録する。
多チャンネルを音量、エコー、ディレイなど処理しながら2チャンネルに振り分ける。
こうして2チャンネルのステレオ録音の出来上がり。

こういうのがマルチ・モノ録音です。
ステレオ録音の技術の発展過程で出てきた技術なので、きっと、聞こえてくるはずのそれぞれの楽器の音を聴こえる形で収録したかったのでしょう。
一旦混ざってしまったものを分離するのは困難です。→エントロピー増大の法則
こうすることで、発展してきたのが、マルチ・モノ録音という技術だと思います。

ところが、このときに重要な要素をいくつか見落としていたのではないかと思います。
まず第一が、位相と時間差の問題。
人間が聴くことを想定すると、音源の位置が違えば、位相差と時間差がありますが、録音位置がバラバラになると位相と時間が狂ってしまいます。

第二に、空間を通してのクロストークの問題。
オーケストラなどは、バラバラにマイクを配置しても、それぞれのマイクにほぼ全部の音が、入ります。
完全に分離することはできないので、それぞれのチャンネルに全部の音が音量差を付けて記録されます。
同じ音源の音がいろいろなマイクで、位相差、時間差、音量差が付いて収録されます。
言ってみれば、クロストークがあるような感じです。

これでいいのか、というと、どうやらこれでは、音場感は出ないようです。

ところが、先日気づいたのは、マルチ・モノ録音のほうが、大型スピーカーには適しているようだ、ということです。
小型フルレンジのシンプルなシステムは古い録音のソースを綺麗に鳴らしますが、大型スピーカーシステムでは、こういうのは、左右がバラバラ、中抜けした音場になります。

逆に、小型フルレンジは、マルチ・モノ録音のソースは苦手ですが、大型スピーカーシステムでは、マルチ・モノ録音が上手に再生できます。

初期には、小型フルレンジで、低音まで鳴らすような箱の技術がなかったので、大型システムに合わせた録音をしていたのでしょう。
そもそも、レコードは高価で、ぜいたく品だったので、装置のほうも大型システムが多かっただろうと思います。
かつては、小型の装置は性能が悪かったので、マルチ・モノ録音の欠点なんて分からなかったと思います。

こう考えてみると、再生装置の性能に合わせて録音方法が変わってきたのでしょう。
長岡先生の記述の行間には、こんな内容が含まれているのかもしれません。


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by mcap-cr | 2017-08-06 00:00 | オーディオ一般 | Trackback | Comments(0)