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シングルバスレフと設計法の欠点

私は、多自由度バスレフを開発していますが、元となっているシングルバスレフは嫌いです。
フルレンジの軽いユニットを使ったシングルバスレフは、癖が少ないのですが、マグネットの弱いウーファーを組み合わせたメーカー製のバスレフ箱は、低音が楽器の音と全然違うので、敬遠しています。

シングルバスレフには、ダクト部分の共振周波数と、ユニット単体の共振周波数とを組合せた2つの共振点があります。
これらは、夫々別に動作した場合の共振周波数とほとんど同じなので、実質的には別々に動作していると考えて良いです。
ユニット単体(下記注参照)の共振周波数は、確かにありますが、思ったほど耳にはつきません。なぜかというと、ユニットの振動抵抗はダクトよりもずっと大きく、すぐに減衰してしまうからです。また、ダクトの(空気塊の)振幅は、ユニットの振幅よりもずっと大きいので、この点も耳につきやすくなっていると思います。
注:ユニットを箱に付けた場合、共振周波数は、ユニット単体の共振周波数f0よりも通常は高くなります(f0cと記述されたりします)。ただし、この点は、少しコメントが必要です。
箱が密閉として扱われても差し障りがない設計の場合は、箱単体にもバネの作用があるので、ユニット単体のバネと箱による空気ばねを足したものがシステムのユニット部分に働くバネとなり、このために共振周波数が上がります。

ただし、バスレフ箱に入れた場合には事情が違います。バスレフ箱の場合、

(1) f0<fdの場合
ユニットの共振周波数(f0)がバスレフダクトの共振周波数(fd)よりも低い場合には、箱は空気ばねとして作用しないので、
f0c=f0として扱って良い。

(2) f0>fdの場合
f0において、箱の空気による反発があるので、
f0c>f0となる。

こういうことは、物理学的解釈からは自明ですが、スピーカー設計の教科書にはあまり出ていないかもしれません。
(この部分は、非公開コメントを受けて修正しました。有難うございました。)

一般の設計書では、シングルバスレフでは、ダクトの共振周波数を、ユニットの単体共振周波数よりも少し上にとります
。そして、その少し上というのをTSパラメータを使った式で公式化しています。
おそらく、一般のシングルバスレフ(以下単にバスレフ)のシステムは、そこからあまり外れずに設計して、低音特性をフラットに近付け、共振周波数から下がすっと落ちる特性になっているでしょう。
私は、この設計法は根本的におかしいと考えていました。
この設計法では、エフゼロの低くないユニットでは、共振点が耳につきやすい周波数になります
共振点付近では、位相が乱れるので、元の音とは随分変わってしまいます。それが、いわゆる癖というもので、経験の長いマニアや楽器の生の音を知る人からは敬遠されてきたのだと思います。
すなわち、この設計法は、低音を出すのが難しかった古代の設計法と言って良いでしょう。
すなわち低音のレスポンスをフラットに近付ける代わりに質を犠牲にする設計法です。
バスレフの共振周波数をf0よりも下にしてしまえば、低域のフラットさは犠牲になりますが、耳につく低音での位相の乱れは少なくなります。
現在は、レスポンスを計測結果にもとづく電気的補正でフラットにすることができますが、従来の設計法でのピーカーシステムを電気補正してフラットにしようとすると、共振点の下では発振してしまいます。
すなわち、従来の設計法によるバスレフシステムは、元々低域が不自然なうえに、補正もかけにくいという欠陥を持っています。

それで、どうしたらいいかというと、電気補正するのであれば、密閉型かそれに類するシステムとして、ダクトの共振周波数をゼロに近付けことが必要です。
このようにすると、ローカットの処理をしなくても、最近のソフトウェアを使った手法で簡単にフラットな特性を得らるし、共振点付近の不自然な音も回避できます。
密閉型ではあっても、空気抜きの穴があったり、空気漏れはあります。ただし、こうした小さな隙間は、バスレフとして動作しても、共振点が実用上十分に低くなっているので、問題ありません。
箱の空気バネの影響を感じる人は、箱の中の空気バネを減衰させる工夫をしているので、石田さんのブログなどを参照されるとよいでしょう。

こうやって、思ったことを書き綴ってみると、従来法の盲点が明確になってきました。


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Commented at 2017-03-29 22:59 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by hiro-osawa at 2017-03-30 02:58
オーディオ機器を信号の伝送系として観ると、必要な周波数帯域の利得がフラットであること、または好みで凹凸を付けられることが優先されています。LCR回路によるフィルタや利得減衰回路、ポート共振は必ず位相が回転する、というより位相を回転させることで目的を実現しています。
ヘタな3WAYや、グライコで低音をいじる、ポートの細長いバスレフの低音がどよ~んと重い、鼻をつまんで息を止めてるみたいになるのはこのためでしょうけど、位相を正しく伝送することは音楽再生ではほとんど無視されてきたみたいですね。
Commented by mcap-cr at 2017-03-30 07:22
> hiro-osawaさん
位相が完璧なのはあり得ないですが、低域の位相のずれは、耳に検知されやすいように感じています。
こうでなければならない、という鉄則はあまりないと思いますが、今までのオーディオの常識には疑わしいものが多いのではないかと思います。
位相のずれもどこまでは良いとか、知りたいと思いますが、実験するにはお金がかかりそうです。
いま分かるのは、自分に耐え難いのがどのあたりか、ということだと思います。
by mcap-cr | 2017-03-29 21:30 | スピーカー設計 | Trackback | Comments(3)