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工学オーディオに取組むオカルト嫌いです。


by MCAP-CR
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カテゴリ:長岡鉄男( 4 )

定説の誤り

長岡先生は、定説が誤っていること、そして定説を覆してきたことを書いておられました。
私も定説には疑問が多いと感じています。

最近気付いた定説の疑問は、複数のユニットを付ける場合の配置方法についてです。
定説は、近接して縦に並べるものですが、長岡先生は、これを敢えて横に並べたりしていました。

私が気付いたのは、複数のユニットを敢えて近接させないことのメリットです。
それまでは、可能であれば、近接させていましたが、不可能な場合に、敢えて離してみたところ別の効果が得られることが分かりました。

そのきっかけとなったのが、UP4Dという方式です。
UP4Dは角柱のそれぞれの面にユニットを配置し、それぞれの高さを変えることで音場感が得られる方式です。
この方式にすると、スピーカーがどこにあるのか分からない、スピーカーの存在を忘れさせる音場表現が可能になります。
そして、複数使いによる高域のレベル低下という欠点も感じさせません。
下の図は、UP4Dの変化形のPUP4Dと同時に書いていますが、基本的には同じ目的のものなので、違いは気にしなくてもいいです。
a0246407_12345320.png
なぜメーカーがこういう発見をしてこなかったのか、思い当たるフシが有ります。
仕事として設計すると、定石と違うことをする前に実験・検証しなければなりません。
検証するには、手間と時間(と費用)がかかります。
スケジュールに追われていたら時間は掛けられないし、オーディオ機器のような儲からないものには開発費もかけられないでしょう。

いまのオーディオメーカーに、定石と違う手法を研究できる余剰の人材(余力)が大勢いるとは思えません(すこしはいるでしょうが、何もしないか、邪魔しかしないかなんて話かもしれません)。
となると、冒険はできないので、いままでのやり方を踏襲する。
こういう状況が続いたので、いつの時代になっても製品はあまり変わらないのでしょう。
箱に力を入れないのもこんな理由でしょう。
箱はコストが大きい割に、見た目の訴求力がないので、コストを掛けても売上に結びつかないと考えているでしょう。
それに、開発者にはオーディオ趣味がないということもあるでしょう。
家庭でも仕事と同じことをするサラリーマンはあまりいません。
メーカー開発者が箱の重要さを知っていれば今のような製品造りにはならないと思います。

長岡先生のように、製品を作り出す必要のない人は、記事そのものが商品ですから、失敗にたいしても付加価値のある記事を書くことができます。
また、自分のように、オーディオを糧とする才能のない人は、好き放題失敗できるので、結果として、定説破りの発見をすることもあります。

いまは、長岡先生のような作家(元々はコント作家だったそうです)が不在なので、オーディオ雑誌は販売部数を落としているのだと思います。
雑誌の記事を書いている著者が、長岡先生のように、失敗を記事にする覚悟があれば、雑誌ももっと売れるかもしれません。
『失敗は成功の元』。物理的な製品を売る責任のない人は、どんどん失敗するほうがいいのではないでしょうか(安全に失敗は許されませんが)。

失敗を避けるとつまらなくなる。

できることなら計算で検証するなどして、分かりきった馬鹿な失敗は避けるべきですが、定説を破り、進んで失敗することも時として必要と思います。

私のばあいは、音の良し悪しはどうでも良くって、何か発見があれば成功なので気が楽です。


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by mcap-cr | 2017-05-27 15:59 | 長岡鉄男 | Trackback | Comments(0)

長岡語録(3)

長岡先生は、いろいろな言葉を残されていますが、直接的な表現は、あまりおもしろくない場合もあります。
直接的でない表現は、行間を読まなければなりません。
私が行間を読めている訳ではありませんが、自分なりに読んでみたことを書いてみます。

長岡鉄男 最新スピーカークラフト②、フロア型と音場型 から

「これは世界の銘器だ」と暗示をかけられて聴くと、実は故障していた装置でも素晴らしい音に聞こえたりする。実音に幻聴がミックスされたと考えてもいいだろう。
---引用終わり

私が、幻聴とか散々書いてきたのは、この言葉を記憶してきたからです。
スピーカーシステムを除くオーディオ機器の音の差は極めて小さいのですが、思い込みが強いと全然違う音に聞こえます。
ケーブルを替えれば音が変わる、と信じて聴けば、別の音に聞こえます。
専用の電柱を立てて専用のトランスを準備すると、苦労した過程を知っているのでそれはそれはいい音に聞こえるだろうと思います。

暗示を掛けられて聴くと、頭の中のイメージがそのまま印象になってしまいます。
「これは安物ですよ」と聞かされてから聴いても、すごく良い音だったり、逆に「これは銘器ですよ」と聞かされてから聴いても??となってしまったりする経験があると、予断の影響を小さくできます。

OWKさんの部屋のように、音響の良いリスニングルームで聴くと、まともな機器で良いソースを聞けば、今までに聞いたことが無いようないい音を聴くことができるので、こういう部屋でハイエンドシステムを聴けば、ハイエンドにいい印象を持つでしょうし、最初にこういう部屋で質の良いローコスト機器の音を聴けば、普通の部屋で聴く高級機器が詐欺のように感じるでしょう。
音の良い部屋では、価格帯の違う機器の音を聴いても、どれもが良い音に聞こえるので、どんな機器を選べば良いのか分からなくなるかもしれません。

OWKさんの部屋で聴いたOSWさんのローコストシステムや、TBの13cmユニットを使ったMCAP-CRなどは、素性を知らない人が目隠しして聴けば高級機の音だと思うでしょう。

長岡先生は、オーディオ評論家という立場があったので、高価な機器を使ってみせる必要がありました。
評論家としての義務を取り払ったらいったいどのような機器を使用されたでしょうか?

スピーカー再生技術を追求してゆけば、ローコストシステムでも、音の良い部屋であれば、良い音を鳴らすのは難しくはありません。

高価な機器を使う義務のない人は、ローコスト・ハイパフォーマンスが良いでしょう。


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by mcap-cr | 2017-05-26 19:52 | 長岡鉄男 | Trackback | Comments(0)

長岡語録(2)

ニュースを見ていたら東京オリンピックのマスコットを、一生の思い出に残るようなものにするようなことを言っていました。
オリンピックのマスコットって、モスクワオリンピックのミーシャ以外ひとつも覚えていません。
皆さん、覚えているのかなあ?

さて、長岡先生の傑作のひとつにスワン+クレーンというスピーカーマトリックスがあります。
この記事の中には、結構凄いことが書いてあります。
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『スワンaとその仲間たち』−音楽之友社から
引用開始-----
広大高密度の3次元音場。398のCDと498のアンプと、1本1万円もしないスピーカー4本でこれだけの音質と音場が得られるのに、この何倍ものカネを注ぎ込んで音質も音場も悪くして喜んでいるというのは一体何なのか。今のオーディオ界は絶対に狂っている。
-----引用以上

長岡先生がこの記事を書かれたのはもう30年以上も前のことです。
この頃は、高級機種が今よりもずっと求めやすい価格設定になっていました。
為替相場も円安で輸入品は非常に高価だったので、特定のマニア以外はあまり手を出していませんでした。
今と比べれば高級オーディオも手が届きやすい価格帯だったと思います。
それでも、ここまで書いています。

この時代と比べると、現在は、ずっと技術が進歩しており、オーディオ用以外のものは、非常に安価でありながら高性能です。
音の良い8cmユニットが1本150円でジャンク売されていたりします。
それに比べて高級オーディオは天井知らずです。

私も、長岡先生のこの記事がずっと頭の中にありました。
この言葉が引っかかって、高級オーディオには何となく抵抗がありました。
すこしだけは、自分にしては高級な装置にも手を出したりしましたが、結局、上記のような長岡先生の言葉を証明するようなことになっています。
長岡先生の場合は、リスニングルーム『方舟』によってこれが実現している訳です。
もちろん、効果の高いオーディオ投資もありますが、リスニングルームに投資しないと上記のように普及品に負けます。
先日お邪魔したOWKさんのリスニングルームは、おそらく日本国内でも有数の音響が楽しめると思います。
そこで、ローコスト自作品スピーカーシステムを聞いて、あっと驚きました。

オーディオのパフォーマンスを上げるためには、装置ばかりに目を向けず、まず、部屋に投資するのが一番だ、というのが長岡先生の意図するところなのでしょう。


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by mcap-cr | 2017-05-22 19:58 | 長岡鉄男 | Trackback | Comments(0)

長岡語録

長岡先生の記事からは、若い頃に刺激を受けました。
当時は行間が読めませんでしたが、最近は少しずつ分かるようになってきたような気がします。
というわけで、時々、長岡先生の記事を引用して書こうかなと思います。

D-101aスワン『オーディオの原点を見つめ直す』から
音場感はバッフル面積に比例するともいえる。こうした問題のひとつの解決法として、超ミニ・スピーカー・システムというのがある。8~12cmのフルレンジ一発、手のひらにのる超ミニ。これをできるだけ宙吊りに近い形でセットして鳴らすと音場感がいいので、プロのモニターにも使われる。
しかし、欠点も多い。まずレンジが狭い。特に低音はまったく出ない。エンクロージュアが超軽量級なので、ふらつきやすい。小型エンクロージュアの背圧のおかげで微小入力に対するリニアリティが悪い。つまり、繊細微妙な音が再生しにくいということ。超ミニ・スピーカー・システムを使っている人は、アマでもプロでもたいてい大音量派である。小音量では、ぼけた音になるからだ。

-引用ここまで

小型エンクロージュアの背圧のおかげで微小入力に対するリニアリティが悪い』というのは、スピーカーユニットのダンパに使われる機械的なバネの他にエンクロージャーの中にある空気のバネの相乗効果を指しているものと解釈できます。
ダンパによるバネに、振動板やボイスコイルなどの質量が加わっているモデルというのは、力学的には、クーロン・モデルで表されます。
クーロン・モデルでは、摩擦環境にある質点に力を加えても最初は動きませんが、ある大きさの力を加えると動き出す、という数式モデルです。
小学校で教わった、静摩擦係数が動摩擦係数に変わるという事象を数式表現したものがクーロン・モデルです。
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クーロン/モデルが適用される条件では、摩擦抵抗がある閾値を超えるととたんに変わるのですから、微小入力に対してリニアに動くということはありません。
上の図で色がピンク背圧のない場合、青色が背圧がある場合となります。
クーロン・モデルが適用される場合、閾値となる駆動力になったときに突然振動板が動き出します。
このときに、更に、バネによる復元力が強いと正確に駆動するのが難しい、ということを指しているのだと思います。

クーロン・モデルは数式化可能ですが、私が使用している多自由度バスレフの運動方程式には含まれていません。
私が公開しているシミュレータモデルを使用したことのある方であれば、クーロン・モデルがなくても、振動板の駆動が簡単ではない(正弦波を入力しても出力がきれいな正弦波にならない)ことが確かめられたと思います。
そこに、クーロン・モデルが加わると、どれだけ駆動が大変なのか...

多分こんなことをさらっと書かれているのではないかと思います。


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by mcap-cr | 2017-05-20 16:33 | 長岡鉄男 | Trackback | Comments(0)