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工学オーディオに取組むオカルト嫌いです。


by MCAP-CR
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今日は、調整についての工学的アプローチについて書きたいと思います。

設計する機械装置が、ベストのパフォーマンスとなるように、プロセスへの入力などを調整することが必要になることがあります。工学的に望まれる(必須と言って良い)調整方法の条件とは、
  1. チューニングパラメータが必要最低限である(完璧な十分は狙わない)
  2. チューニングの手順と終了条件が定められている
の2点です。この条件を満たさないで設計するのは、粘土で造形するのと同じで、腕が良ければ最高の結果が得られますが、どれが最高か分かりません。ミケランジェロとロダンの彫刻のどちらが優れているか、なんていう議論をするのと同じでナンセンスです。

チューニングとも言えないですが、設置場所に設置するという条件の設計時には、現地の寸法を測りきれていなかったり、製作精度が不確かだったり、関係ないところでの抜けや間違いが想定されたりするので、どこかに自由度を持たせるのがふつうです。自由度なしに製作してしまって現地に持ち込んでも、現場にフィットせずにお持ち帰りなんて洒落になりません。

以前、あるスピーカー屋さんのシステムの脚部を見たときに、システム1本の脚を4本のボルトで調整するようになっていました。

エンジニアからは、こういう設計は、素人臭く見えます。
機器を床に設置する場合に、3点であれば必ず全ての点が床面につきます。
そこで、必ず水平を出そうと考えるのであれば、3点のうち2点を調整可能にしておけば、水平設置することが可能です。三脚と同じですね。
3点で安定性が足りないのであれば、4点にしてもよいですが、そこで水平を出すためには、3点だけを調整可能にすれば足ります。4点調整可能にすると高さも調整しなければなりません(まさにどツボにハマる感じ)。

それでも面倒なので、自分の場合は、更に簡略化します。
床面は多少の凸凹はありますが、殆どの場合、全体的には水平と見ても差し支えないので、スピーカーシステムの場合には、3点だけ短い脚を付けておけば、どこに置いても安定します。

3点で不安なのであれば、4点とし、そのうちの1点だけ調整可能にしておけば、4点全部を床面に設置させることができます。この場合、設置の水平度は、床の水平度と同等ですが実用上は問題ないでしょう。
こういうのが、工学的にはよく使われるチューニングの方法です。

3点固定+1点調整、という手法なら、調整するところが一箇所なので、誰でも簡単に調整でき、更に、調整の結果が一通りに定まります。
これに対して4点調整にしてしまうと、高さがどうで、水平度がどうで....となって時間がかかるし、システムを少し移動させただけで全部やり直しで面倒です。床と同程度の水平で満足できない人は3点調整可能にし、さらに左右の高さがほんのすこし違っても気になる人は、レーザー墨出し器とかを使って正確に調整すれば良いでしょう(10万ちょっとで買えるので、電源ケーブル1本くらいのものですよ~)。
しかし、そこまで気にするなら、聞く人の頭も動かせないので、自分を固定する治具が必要です(ああ嫌だ!)。
過大な自由度と過大な精度を追い求める設計は、調整が大変なので、エンジニアはすごく嫌います。
すなわち、最低限の自由度と必要十分な精度が必要であって、オーバースペックは害しかありません。

私自身、多自由度バスレフ型というチューニングの難しいシステムを作っている訳ですが、これを、フレキシブルに調整可能にすると、ダクトの断面積、長さや空気室の容量の組み合わせが無数にあるので、調整し切ることは不可能でしょう。
このため、私は、基本的には調整機構を付けません
どうしても調整で追い込むつもりがあるのであれば、ダクトだけを調整可能にするか交換可能にします。
主空気室の内容積は、何かを突っ込めば小さくできるので、ここは大きく作っておいてもよいでしょう。
副空気室の容積を変更可能にするためには、点検パネルを作っておかなければならないのですごく面倒です。

ダクトは、断面積を小さくするのは簡単ですが、大きくするには、着脱可能なフランジ付で作らなければなりません。これは、実用的ではありません。

こんな理由で、私は、チューニングをできるだけ実施しないで済むよう、シミュレーションプログラムを作成しました。
このプログラムを使えば、かなり多くの設計を一度にシミュレーションできますが、それを比較してどの辺を設計の着地点にするかを決めるだけでも面倒です。

ですから、無数の設計を検証するのではなく、実用的な制約を設けて設計の自由度を減らします
実用的な制約とは、全体サイズであったり、入手可能な管のサイズであったり、振動板の面積に対して自分で設定した設計範囲であったりします。
また、最近は、ダクトを長くすると効率が落ちるし、工作が面倒になるので、なるべく短くなるように設計するようになりました。

多自由度バスレフで遊んでみたい方は、是非ともシミュレーションプログラムを使って設計の着地点を探ってみてください。

シミュレーションプログラムは下記にあります。

http://mcap.webcrow.jp/software_jp.html

この中のcode004Jが、複数の設計を同時にシミュレーションするプログラムです。
Windows用の実行ファイルとDLLを含んでいますが、C言語のソースが付いているので、Linux、iOS、Android、MAC OSでもコンパイルすれば使えると思います。もちろんUNIXやVMS等のワークステーションやスーパーコンピュータで計算させることも可能です(誰もそんなことはしませんが)。Linuxは、64ビットのGCCコンパイラを使えるので簡単です。CUI(コマンドラインから実行する方法)ですが、計算が早いし、マニュアルも付けてあります。

Windows版は、フリーのMinGWでコンパイルしてありますが、32ビットなのでLinuxに比べると計算実行速度が遅くなってしまいます(大した問題ではありませんが念のため)。
a0246407_14183434.png
オーディオ趣味にも工学的アプローチは必要なのだと思います。
目的に対してオーバースペックな趣向はやめましょう。


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by mcap-cr | 2017-03-31 21:12 | スピーカー設計 | Trackback | Comments(0)

MCAP-CRの等価モデル(2)

すこし物理っぽく近寄りにくい内容を含む記事ですが、理系の方は、お読み下さいね。

前回、MCAP-CRの等価モデルについて書きました。
そこでは、シングルバスレフ、ダブルバスレフの振り子による等価モデルを紹介し、続いてMCAP-CRの振り子モデルについても書きました。
その中でモデルの不完全性についてコメントしましたが、それだけでは不十分と思いますので、補足したいと思います。
修正した等価モデルは下記のとおりです。
a0246407_16211873.png
振り子だけでは表現できず、バネを使っています。
バネがないと、モデルを正しく表現することができません。
MCAP-CRの面倒なのは、内部に隠れているダクトの相互の影響です。
当初からウェブサイトで紹介している運動方程式モデルには、それがすべて表現されているのですが、図にするのが難しく、振り子の形にはできませんでした。
いままで使用してきた図も、この部分は、円形とか四角形で表現してきました。
振り子モデルに表現するにしても、相互に結び付けるのが大変なので、バネが6本も追加されています。
こういった部分を曖昧にしてしまうと、動作を正しく計算することができず、いつまでたっても、仮説の話に終止してしまいます。
技術者としては、科学的か、工学的アプローチが何にもまして重要で、オーディオ装置のような機材に音楽性がどうたらと云っているのでは、他の世界の技術者からは、オーディオマニアッたら...とバカにされます。

電源ノイズを減らすために、専用の電柱とトランスを準備するのも一考ですが、それだったら、専用の発電機を設置するほうが徹底してすっきりするでしょう。私だったら絶対にやりませんが。
何より、最終的には使用する直流でノイズが少なければよいのですから、電源の交流の段階で、二次側からトランスに入ってくるノイズを気にする必要性はよくわかりません。アンプその他機器内部の直流部分の出力をオシロで見て、専用トランスの使用でこんなに直流部分が完璧になった、というのなら分かりますが、例の記事からはそういう検証は、読み取れませんでした。
いままでメーカーが散々技術的に改善してきた電源部ではなく、分電トランスに拠り所を求めてしまう発想は、一部オーディオマニアの宗教的とも言える取り組みで、近寄りがたさを感じます。電線教と同じようなものでしょうが...

いずれにしても、オーディオの世界には、似非科学が蔓延しているので、そうしたものとは慎重に向き合い、怪しいと思うことが大切です。
まあ、図や数式に書けないようなものは、だいたい怪しいと思ったほうがいいでしょう。


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by mcap-cr | 2017-03-30 21:59 | 科学 | Trackback | Comments(0)
私は、多自由度バスレフを開発していますが、元となっているシングルバスレフは嫌いです。
フルレンジの軽いユニットを使ったシングルバスレフは、癖が少ないのですが、マグネットの弱いウーファーを組み合わせたメーカー製のバスレフ箱は、低音が楽器の音と全然違うので、敬遠しています。

シングルバスレフには、ダクト部分の共振周波数と、ユニット単体の共振周波数とを組合せた2つの共振点があります。
これらは、夫々別に動作した場合の共振周波数とほとんど同じなので、実質的には別々に動作していると考えて良いです。
ユニット単体(下記注参照)の共振周波数は、確かにありますが、思ったほど耳にはつきません。なぜかというと、ユニットの振動抵抗はダクトよりもずっと大きく、すぐに減衰してしまうからです。また、ダクトの(空気塊の)振幅は、ユニットの振幅よりもずっと大きいので、この点も耳につきやすくなっていると思います。
注:ユニットを箱に付けた場合、共振周波数は、ユニット単体の共振周波数f0よりも通常は高くなります(f0cと記述されたりします)。ただし、この点は、少しコメントが必要です。
箱が密閉として扱われても差し障りがない設計の場合は、箱単体にもバネの作用があるので、ユニット単体のバネと箱による空気ばねを足したものがシステムのユニット部分に働くバネとなり、このために共振周波数が上がります。

ただし、バスレフ箱に入れた場合には事情が違います。バスレフ箱の場合、

(1) f0<fdの場合
ユニットの共振周波数(f0)がバスレフダクトの共振周波数(fd)よりも低い場合には、箱は空気ばねとして作用しないので、
f0c=f0として扱って良い。

(2) f0>fdの場合
f0において、箱の空気による反発があるので、
f0c>f0となる。

こういうことは、物理学的解釈からは自明ですが、スピーカー設計の教科書にはあまり出ていないかもしれません。
(この部分は、非公開コメントを受けて修正しました。有難うございました。)

一般の設計書では、シングルバスレフでは、ダクトの共振周波数を、ユニットの単体共振周波数よりも少し上にとります
。そして、その少し上というのをTSパラメータを使った式で公式化しています。
おそらく、一般のシングルバスレフ(以下単にバスレフ)のシステムは、そこからあまり外れずに設計して、低音特性をフラットに近付け、共振周波数から下がすっと落ちる特性になっているでしょう。
私は、この設計法は根本的におかしいと考えていました。
この設計法では、エフゼロの低くないユニットでは、共振点が耳につきやすい周波数になります
共振点付近では、位相が乱れるので、元の音とは随分変わってしまいます。それが、いわゆる癖というもので、経験の長いマニアや楽器の生の音を知る人からは敬遠されてきたのだと思います。
すなわち、この設計法は、低音を出すのが難しかった古代の設計法と言って良いでしょう。
すなわち低音のレスポンスをフラットに近付ける代わりに質を犠牲にする設計法です。
バスレフの共振周波数をf0よりも下にしてしまえば、低域のフラットさは犠牲になりますが、耳につく低音での位相の乱れは少なくなります。
現在は、レスポンスを計測結果にもとづく電気的補正でフラットにすることができますが、従来の設計法でのピーカーシステムを電気補正してフラットにしようとすると、共振点の下では発振してしまいます。
すなわち、従来の設計法によるバスレフシステムは、元々低域が不自然なうえに、補正もかけにくいという欠陥を持っています。

それで、どうしたらいいかというと、電気補正するのであれば、密閉型かそれに類するシステムとして、ダクトの共振周波数をゼロに近付けことが必要です。
このようにすると、ローカットの処理をしなくても、最近のソフトウェアを使った手法で簡単にフラットな特性を得らるし、共振点付近の不自然な音も回避できます。
密閉型ではあっても、空気抜きの穴があったり、空気漏れはあります。ただし、こうした小さな隙間は、バスレフとして動作しても、共振点が実用上十分に低くなっているので、問題ありません。
箱の空気バネの影響を感じる人は、箱の中の空気バネを減衰させる工夫をしているので、石田さんのブログなどを参照されるとよいでしょう。

こうやって、思ったことを書き綴ってみると、従来法の盲点が明確になってきました。


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by mcap-cr | 2017-03-29 21:30 | スピーカー設計 | Trackback | Comments(3)

QCオーディオの勧め

いままでもいろいろ書いてきたし、これからも書いてゆくと思いますが、一部のオーディオマニアは、差が小さければ小さいほど多くを投資します。
これはどういうことかと言うと、品質管理(QC)手法と全く逆のアプローチをするということです。
QC手法は原始的な手法ですが、某大手自動車メーカーのカンバン方式等とは違って、仮定がひとつ崩れると全部崩れるようなものではなく、いつどこで何に対してどのように使っても効果が出ます(たとえば、カンバン方式なんて、取引上有利な立場を利用して下請けに押付けてるだけですから、下請けが耐えきれなくなったら一気に崩れます)。

結果に対する影響度を表す図が、パレート図と呼ばれるものです。
下のリンクはパレート図の例です(特にお勧めしているわけではありませんが、ウィキペディアのパレート図が気に入らなかったので下のリンクを見たらそれらしい図が出ていました)。
パレート図は、影響度の大きな要因が左から順に描かれ、右にいくほど些細な要因であることを示します。
で、オーディオ装置では、左側に何が来るかというと、部屋とスピーカーシステムです。
もっと言ってしまえば、環境騒音なんていうのも見逃せません。
オーディオ全体では、ソースも外せませんが、ソースはソースで別なパレート図を作って論じるべきです。

ところが、スーパーマニアになると、主要因は対策が尽きたのかもしれませんが、全体のパフォーマンスに影響があるかどうか分からない要因(パレート図の右側の項目)に対策を求めます。
こういうのは、評論家の先生方が、出版物の中に書いて布教してきたので、スーパーマニアだけのせいではありませんが、私の書いていることに疑問があったら、目隠しして、家族に繋ぎ変えてもらって、差があるかどうか確認してみてください(一回ごとに外すのは忘れないでくださいね。そうしないとどれを使っているのかバレてしまいますから)。

QC手法については、ウィキペディアその他に詳しく出ていますが、私も、常にQC手法的に問題を解決してゆきます。
QC手法は、一見すると、普通と違うようなアプローチもあります。
例えば、不良の要因分析に用いる特性要因図(魚の骨)なんていうのを書くと、大骨ではなく、コストのかからない小骨から対策してゆきます。
そして対策を繰り返してゆくと、重大な問題が絞られてゆき、最終的には不良発生要因の大骨に対する処置法が見つかっていたり、解消されていたりします。
いわば、コストをかけずに、出来るところからやるのがミソです。
他にも、ブレインストーミング(考えついたことを否定せずに全部列挙してから整理する)など有効な手法がいろいろとあります。
ブレインストーミングは、考えられることを全部列挙する訳ですから、思い込みも、もしかしたら、も全て評価することになり、結果として思い込みを排除できるかもしれません(考えの違う人を含めて複数で行うほうが効果的です)。

特性要因図では、カネのかからないところから、と書きました。
特性要因に漏れがなければ、心理要因がいろいろ出てくるはずです。
例えば、『心配事がある』、『部屋が臭い』、『部屋が散らかっている(私のこと)』...なんていうのは、結果に対する影響として大きいのですが、対策はコストをかけずにできたりします。解決できないものもありますが。
絶対にあるのは、『それ以外あり得ない(と思い込んでいる)』ということです。
こういうのは、『それはあり得ない』とマインドをコントロールして聞いてみましょう(コストゼロです)。
発想の転換で自分に暗示をかける:それ以外あり得ないそれはあり得ない
これで評価が変われば、思い込みが間違っていたということになります。
たとえば、私は、ずっとケーブルで音が変わると感じてきましたが、あるとき、ふと疑問に思い、音なんか変わるわけがない、と自分に暗示をかけたら、それ以降は、ケーブルの違いを感じなくなりました。
そうなれば、解決方法がまるっきり変わってきますから、投資すべき部分が明確になるし、カネの掛からない方法も次々と出てきます。
そして、カネをかけずに出来ることを全部やってしまったら、それから出費を始めても遅くありません。
できれば、出費する前に、しばらく冷却期間を置くほうが良いと思います。
時間が経つと、『これでも問題ないか...』となることも往々にしてあります。

間違っても最初からハイコストオーディオを目指すべきではありません。
効果を見極めずにハイコストオーディオに走ると、過程をすべて失います
趣味においては、過程を楽しむべきであって、過程がなければ続きません。
例えば、釣りやゴルフだって練習して上手になるからこそ趣味として成り立つはずです(自分はどれもヘタクソですが)。
もちろん、ハイコストオーディオを購入するための金稼ぎが趣味なら別ですが。

QC手法は、趣味生活でも役立つので、是非とも実践していきましょう。




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by mcap-cr | 2017-03-28 21:37 | オーディオ一般 | Trackback | Comments(0)
六本木で開催されている大エルミタージュ美術館展に行ってきました。
美術は音楽と似たところ、似てないところがありますが、共通するところは、気持ちを穏やかにしてくれたり、掻き立ててくれたり、心に訴えてくるところでしょう。
エルミタージュ美術館には行ったことがないので、収蔵作品については殆ど知りませんでした。
ポスターを飾るのがクラーナハの渋い聖母子像ということで、有名でない名作が来ているのだろうとか、勝手に邪推していました。
訪れたのは、六本木で、日曜の昼過ぎだったにもかかわらず、運良くあまり混み合っていませんでした。
この前ブログに書いたミューシャ展も、そのときは混んでいませんでしたが、今はかなり混み合っているようです。
こうした展覧会はなるべく早めに行ったほうがいいのかもしれません。

さて、足を踏み入れてみると、自分の知らないすごい作品がずらりと並んでいます。
はいっていきなり、カルロ・ドルチの『聖チェチリア』に目が吸い寄せられました。
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ドルチとい画家は知りませんでしたが、これは単に自分が不勉強なだけでしょう。
美しいです...
そして、ティツィアーノの『羽飾りのある帽子をかぶった若い女性の肖像』にも目が止まりました。
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このブログのリンクにも紹介している、desire_sanさんのブログを拝見して、ティツィアーノについて少し覚えたので、その魅力を更に感じました。
他にも素晴らしい作品がたくさんありましたが、中でもムリーリョの作品が目に止まります。
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『幼子イエスと洗礼者聖ヨハネ』は、キリストが特に堂々としていて、ジョヴァンニよりもずっと格上であることがひと目で伝わります。ムリーリョの構図じは、三角形になっているとか言われます。
一緒に行った女房は左下と右上が三角形になっていると言っていましたが、私には、左上と右下で三角形になっているように見えます。
左上は、キリストと天使、右下はジョヴァンニと羊ということで、一線を引いているように感じました。
正しい解釈ではないと思いますが。

そして注目したのは、同じくムリーリョの『受胎告知』です。
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中央の鳩を中心に、右下が聖母マリア、左下が大天使ガブリエレと配置されています。
私が受胎告知で注目するのは、大天使ガブリエレのほうです。
有名な、ダ・ヴィンチの出世作の大天使の羽は、ちょっといびつに見えます(教科書的には、生物学的に良く観察されていることになってます)が、ムリーリョのガブリエレの羽は自然で美しい形をしています。
ガブリエレの顔は、りりしくて美しい、女性のような男性の感じです。
顔は女性っぽいのですが、足は男性であることがよく現れています。
自分の好きな受胎告知のひとつとなりました。

ちょっと脱線しますが、2010年にパリに行ったときに、ルーブル美術館までほぼ毎日通いました。
そこで、毎回必ず立ち止まってしばらくかじりついて見た絵が、グイドー・レーニの『受胎告知』(下の写真)でした。
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ルーブルではフラッシュを炊かなければ写真撮影しても怒られないので、その絵も写していました。
レーニの絵も、注目するのは天使のほうで、美しいけれども恐ろしい美少女のようでした。
羽は飾りのようですが、受胎告知が一大イベントであることが強く感じられる作品だったと思います。

東京にいると、こういう美術館展にすごい作品がたくさんやってきます。
今年に入って見ただけでも、ティッツィアーノ展、シャセリオー展、ミューシャ展、エルミタージュ展と、素晴らしい作品を多く鑑賞できました。

人間の五感の中で、視覚は特に敏感なのだそうです。
目を隠して鼻をつまんだら味は分からないし、目を隠してオーディオの音を聞いても、音の違いは分かりにくかったりします。
音を比較するのでなければ、暗くすると音が大きく細かいところまで聞こえますが、機器の音の差は返ってわからなくなったりします。
それに対して、耳を塞いで、鼻をつまんで見ても、絵は見分けが付きます。
美術はオーディオよりも明確なので本質的議論ができそうですね。




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by mcap-cr | 2017-03-27 21:52 | 美術 | Trackback(1) | Comments(0)
昨日、アマチュアの工夫処について書きました。
その中で、箱については、メーカーがアマチュアを追いかける展開になるのではないかと書きました。
そこでいろいろと思い出しました。
まず、オーディオショーの類でちゃんとした低音を聴けることは稀です。
せっかく全体的にバランスのいい音が鳴っているのに、低音だけは、癖があって一本調子、なんていうことも結構ありました。
その理由は、殆どの箱がシングルバスレフであるためだと思います。
何度も書いていますが、シングルバスレフは、共振周波数付近の癖が強く、低音が一本調子です。
だから、スーパーマニアは、シングルバスレフを好まず、密閉に類する箱を使い、電気的に補正してフラットにしたりします。
自作派が、バックロードホーンを好むのも、バックロードホーンの低域が、フラットでないにもかかわらず、シングルバスレフのような耳につく癖がないからだと思います。
それなのに、メーカーは相変わらずシングルバスレフ箱に高級なユニットを載せたシステムを作ります。
理由として考えられるのは、メーカーの設計が、低音の質に興味がないか、営業が、低音なんか出てれば売れると思っているのか、あるいは箱の技術が無きに等しいか...というところでしょう。
たとえば、スピーカーユニットで生計をたてているF社は、標準箱をシングルバスレフにしていますが、パンフレットに載せている公式と一致していなかったりしました。
それだったら、公式のところに、公式は目安でしかないとコメントしたほうが良いと思いますが、。
長岡先生が亡くなった後は、一風変わった設計の箱も載せていますが、説明はありません。
低音の質は箱で決まると思うのですが、メーカーは、その辺については気にしていないようです。

最近は、振動板の材質や形状による技術革新は一段落したようなので、アマチュアの工夫処は箱、と書いたのですが、メーカーにも少しは工夫して欲しいなと思います。


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by mcap-cr | 2017-03-26 10:14 | スピーカー設計 | Trackback | Comments(4)
科学的な目で物事を分類する場合、大雑把にいうと既知未知仮説(意見)の3つのケースに分かれます。
これらを厳密に区別するのは難しい場合が多々あります。
しかし、たとえ完璧ではなかろうとも、自分で考えて分類するのは大切なことです。
常日頃から、これは、既知の情報である、これは仮説である、または、ここは全く分かっていない、というように分類していないと、プロパガンダに簡単に騙されることがあります。

受け手の無知に付込んで騙すのは、プロパガンダの常套手段です。
例えば、歴史修正主義なんていう用語が有ります。
プロパガンダとしてこういう用語を利用する人々は、『俺様がようやく虚構の事実を作り上げたのに、真実を追求するなんて許せない!』という思いで使用します。
本来、歴史的真実はひとつしかありませんが、為政者によって捻じ曲げられたために正しく分かっていない、というのが遠い昔の歴史でしょう。
そうした古代の歴史の中にも、各所から集めた文献や、科学的分析等により、既知と扱って良い部分があります。
こうした、既知の部分を点として、その間をどういう線で結ぶか、そこに仮説を入れて読み解いてゆくのが、本来の正しい歴史へのアプローチでしょう。
ところが、残念ながら、義務教育では、こうした3つの区分を教えていません。
自分が教わったことを覚えていないだけかもしれませんが、実際にこうした状態を区別できている人が多いようには見えません。
ですから、証拠のない突拍子もない説が、突然事実として大本営発表されます。
こうした嘘のプロパガンダは、大抵、報道機関から出されます。
あまりに突拍子もなさすぎて反論の言葉を失います。
人は、予期していないことに対して素早く反応する能力の低い動物です。
論理的にあり得ないことに対しては、きょとんとするだけで、素早く否定するのは、案外に難しいことです。
否定するまでもない突拍子のない嘘は、放置してもそのうち消えるだろう、なんて思ったりしてしまいます。
例えば、済州島で慰安婦刈りが行われた、という事実があれば、その当時は目撃者が多数いたでしょうし、そんなことすれば、暴動になって死者が大勢出るでしょう。実際には目撃者は一人も居ません。事実がないのだから目撃のしようがありません。
目撃証言なんて、後からプロパガンダに乗っかってででっち上げられただけのものなので、一貫性もないし、辻褄が合っていません。
ところが、そうした証拠もなく証人もいない、朝日新聞社の捏造事実を即座に徹底的に否定しなかったため、虚構事実が浸透し、未だに主張する人がいるのが実態です。

多分、こうした歴史の例は分かりやすいと思いますが、オーディオ文化(?)にもこうした意図的な誤解による誘導が多々あります。

そこで、自分なりに既知、未知、仮説とに分けてケーブルの議論について書いてみました。

既知の例
  • ケーブルの抵抗値、インダクタンス値、キャパシタンス値は測定できる
  • ケーブルの周波数特性は測定できる
  • 通常の工業規格品のケーブルの周波数特性は、可聴帯域内ではフラットである
  • ケーブルに流せる許容電流は、実測と計算とで定められる(極限値ではなく安全値)
  • 通常使用でスピーカーケーブルに流れる電流値は、許容値よりもずっと小さい
  • ブラインドテストで、ケーブルの差を聞き分けられたという成功例は報告されていない(⇐どなたかご存知でしたら教えてください)
未知の例
  • 工業用測定器で検知できない音響信号の差を耳で聞き分けられる人がいるかいないか

仮説の例

  • オーディオでは、ケーブルを変えると音が激変する(A)
  • オーディオケーブルを変えても音は変わらない(B)


上記の仮説では、(A)がオーディオ会の定説で、(B)はそれ以外の定説と言って良いでしょう。

また、(B)は、既知の事実から演繹的に導かれる結論といっても良いので、おそらく、極限的に事実に近いと考えられます。

しかし、未知の例に書いたように、聞き分けられる人が一人もいないことを証明できないと納得しない人がいるのも事実です。

(A)は、歴史の例で書いたように、突拍子もなさ過ぎて、反論もされないままに何十年も過ぎましたが、いまだに(A)の主張が多いのが事実です。


大切なのは、おかしいと思ったらまず疑ってみて、たとえ突拍子もない説でも、間違いは直ちに、徹底的に否定することなのでしょう。


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by mcap-cr | 2017-03-26 09:51 | 科学 | Trackback | Comments(2)

アマチュアの工夫処

オーディオ機器は、電気系と機械系とに分けて考えることができます。
電気系機器には、アンプ、プレーヤー類があり、機械系機器には、スピーカーシステムがあります。
ここで、スピーカーシステムをわざわざ機械系機器と呼んだのは、スピーカーシステムだけが、空気を扱う機器だからです。
スピーカーシステムは、空気に粗密を作り出す機器です。空気に粗密ができると、空気によるバネの効果で、密の部分から粗の部分へと空気が移動して粗密のない安定した状態を作ろうとします。
このような空気の粗密が気圧の変動波となって鼓膜や体表面等を刺激し、それが音として脳に認知されます。
空気は、流体力学的に扱うと、圧縮性流体なので、水のように、圧縮性が小さいために非圧縮性として扱う流体の運動方程式が複雑です。また、空気が変位する速度が遅いと粗密の差ができにくいため、周波数の小さな低音は、変位量を大きくするか、変位する面積を増やして、粗密が維持できるようにしなければなりません。
空気の流体力学的挙動に着目すると、複雑な方程式を解かなければならないのですが、実際には、こんな物理学的なアプローチは殆どありません(オーディオ業界では皆無と言って良いでしょう)。
私が紹介している運動方程式モデルも、流体力学の"り"の字もないくらい簡略化したモデルですが、その程度のモデルでさえオーディオ業界に殆どないというのは、オーディオ業界が、一般の技術水準から乖離している証拠でもあります。

電気系機器もアマチュアが工夫する余地はありますが、パーツの品質も回路も行き着くところまでいった感があり、電子回路の開発や工作で頑張っても、差をつけるのは難しいと思います。
逆に言えば、大きな差があったら、どちらかまたは両方が間違っているとも云えます。
ましてや、電線を工夫したところで(リード線のように振動が電気信号としてノイズとなる場合は別ですが)、計測可能な差を出すのは殆ど不可能というか、意味がありません。
直流抵抗は下げられますが、それには、材質を替えるより、断面積を増やすほうが簡単です。
また、インダクタンスは形状を変えれば変えられますが、増やすだけなので意味がなく、キャパシタンスも被覆線で変えられますが、並列にコンデンサーを繋ぐようなものなので意味があるかどうかわかりません。

ということで、もはや、工夫できるのは、機械系機器が中心となってしまいました(電気が得意な方は違うというでしょうが、それが音の差として人間が検知できるかは別の話です)。
このため、アマチュアは、スピーカーシステムの工夫に注力するようになったのだと思います。
また、スピーカーユニットそのものを工夫するのは簡単ではないので、箱を工夫するのがふつうです。

箱の機能は、振動板が作り出した空気の粗密を維持することです。
空気の粗密を維持する方法として、まず、バッフルがあり、バッフルを無限大に拡張したモデルの大型密閉箱があります。
ローエンドの伸びを犠牲にする代わりに実用的な低音域の音圧を上げられるようにしたのがシングルバスレフです。
バックロードホーンは、シングルバスレフのダクトをホーンにしたような形で、広い周波数帯域にわたって、空気の粗密を維持するよう工夫した方式ともいえます。
共鳴管方式は、少し違って、振動板で、共鳴管を共鳴させる方式です。

MCAP-CRは、バスレフを拡張して、共振点を多重化して、ローエンドを延ばしたり、シングルバスレフで耳につく癖を減らした方式です。

ちょっとむずかしいのは、石田さんのバックロードバスレフで、副空気室に抵抗を付けて、副空気室のバネの効果をブロードに広げた(バネ定数が周波数に応じて変わる)、アナログ的動作のダブルバスレフなのではないかと思います。
それまでも、ダクト部分に抵抗を付けて共振点のピークを抑えたスリットダクトのバスレフ等はありましたが、石田式バックロードバスレフは、バネ部分の動作を周波数によって、バネ定数が変わるような動作にした方式ではないのかと思います。
わかりにくいですが、ダクトに抵抗を付ける方式ではなく、空気バネを工夫した方式なので、ロスがすくなく効率が高いのではないかと考えています(あくまでも仮説ですが)。
以前は、石田式BHBSは、バックロードホーンに近い方式だと思っていましたが、いまは、バスレフに近い方式だと解釈しています。

こうやっているうちに、箱の技術は、アマチュアがメーカーを超えてしまったようです。
今後は、益々箱の工夫が進んでゆき、メーカーがアマチュアを追いかける展開になってゆくでしょう。


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by mcap-cr | 2017-03-25 15:47 | スピーカー工作 | Trackback | Comments(0)
『ソムリエを騙すなんて簡単だ』そうです
という記事を過去に書きました。
ソムリエは、ワインについて深く知り、料理に合わせるワインを美食家に提案したり、いろいろな言葉で形容することができる訓練された職業の人たちです。
ワインだけでなく、料理そのものにも詳しく、単なるワイン評論家ではありません。
試飲して、産地や産年を言い当てたりするのは、素晴らしい能力だと思います。
しかしながら、それでも、ワインに色を付けたら分からなくなってしまった...
ということが上記記事で紹介したリンク先に書いてあります。
ワインの場合は、化学的に微小な違いまで分析できますが、それを人間の経験と感覚だけでは判別することはできないだろうと示唆するのが、上記のブログで紹介した記事です。

オーディオの場合は、測定器でも判別できないケーブルの差を言い当てられるという人がたくさんいるのですから、いっそのこと、そのような特殊技能を認定するソムリエ制度が必要なのではないでしょうか。
ワインの場合は、化学分析可能な差も人間が判別できなくるのが、オーディオの場合は、測定器で判別できないケーブルの差を判別できる...超常現象ですか?何だこりゃ??

上記の記事に戻ると、ワインに色を付けて騙されたのですが、目隠しして試験したかどうかは書いてありません。
多分、目隠しだったら、色で騙すという小技が効かないので、ソムリエの人々は、判別できると思います。
ワインに色を付ける、という行為と同等なのが、機器の筐体を変える、ということでしょう。
往年の銘器のガラクタがあったら購入して、安い機器の中身をいれるとかやってみたら、果たしてオーディオソムリエは正しく聞き分けられるのでしょうか?


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by mcap-cr | 2017-03-24 16:08 | オーディオ一般 | Trackback | Comments(0)

捏造はかく作られる

今日は、森友学園理事長の証人喚問が行われました。
たまため、NHKの英語ニュースを聞いていて、捏造に続く印象誘導が行われたところを聞いたのでメモしておきました。

事実はというと、安倍首相婦人と森友学園理事長とが違う証言をした、ということなのですが、NHKの英語ニュースでは、これを、安倍首相婦人は覚えていないと言ったが森友学園理事長は覚えていた、という表現していました(スクリプトがないので正確ではありませんが)。
これは何が問題なのかというと、報道の内容と事実とが違うからです。
証言の内容が違うのは、常日頃からあることで、それには、本当の記憶違いもあるし、同じものを見ても解釈が違うこともあるし、片方が嘘吐き両方嘘吐き、いろいろな場合があります。
証人喚問では、事実と違う証言をした場合に罰則がありますが、事実と違うことが証明されなければ罰則を適用されることはありません
このように、正確なことが分かっていない場合には、XXはこう言った、YYはこう言ったという事実の部分だけを報道すべきであって、片側が何かを隠しているかのような印象の色を付けて報道してはなりません
日本語が分かる人で、証人喚問を直接聞いた人が聞いたり、背景にある事実(NHKをはじめとする反日マスコミが一部野党と共闘して政権を陥れようとしている)を知っている人が聞けば、NHKが安倍夫人に疑惑があると印象付けようとしたことが分かりますが、英語ニュースだけ聞いた人は、安倍夫人が重要な事実を隠蔽していると解釈するでしょう。
NHKの狙いは、まさにそこにあります。

こういうのは、毎日新聞が、日本人が読まないであろう英語版ニュース報道で、日本人が変態であるかのような捏造記事を撒いていた(パチンコ屋の倒産を応援するブログ⇐お勧め)のと同じ手法です。

私達の日常生活で英語が必要な場合はすくないですが、だからといって、英語版で捏造記事を発信し続け、日本に害を与えた報道機関は、業務停止等の行政処分を課すと共に、立法措置が必要でしょう。
それと共に、インチキ情報に騙されないようひとりひとりが気をつけていかなければなりません。

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by mcap-cr | 2017-03-23 19:18 | 政治 | Trackback | Comments(0)