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ケーブルで音が変わる?

hiro-osawaさんのブログに気になる記事を見付けました。
ご友人からオーディオ用ケーブルを勧められて困ったということです。
hiro-osawaさんは、私と同じく技術肌なので、理屈のはっきりしない意見には懐疑的な場合があるようです。
オーディオ用ではなく、産業用の電線にはいろいろな規格がありますが、一般的に、電線は、耐電圧と許容電流が性能のスペックになります。
それ以外に屋外用とか屋内用の区別もありますが、オーディオ装置を屋外に設置することはないと思いますので、普通は屋内用のケーブルを使うことになります。
許容電流は、hiro-osawaさんが書かれている通り、10A/mm2位が最大電流密度の目安です。
電線の規格によって、放熱特性が違うので、同じ断面積の電線でも、規格により、また、1本のケーブルに含まれる電線の数により、許容電流は違います。
オーディオケーブルには、数十万円とか恐ろしい価格のものもありますが、そのようなケーブルを使ったからといって、大きな電流を流せる訳ではありません(大電流の必要ないし)。
導体の純度が高かったり銀素材を使えば抵抗率が小さくなるので、産業用のタフピッチ銅の電線よりも、多少は許容電流が上がりますが、上記のように放熱特性によって許容電流が違うので、純度が高いからといってケーブル製品としての許容電流が高くなるということはありません。

オーディオケーブルによって音が変わると言い出したのは、たしか、江川三郎先生だったと思います。
最初から、効果は疑わしいという意見もありましたが、この説は、あっという間に支持されて広まってゆきました。
長岡鉄男先生も否定しなかったということもあり、ケーブルで音が変わるというのは定説になりました。
私も、この定説を信じる一人でした。

長岡鉄男先生は、他の先生方が推奨していた高級スピーカーケーブルではなく、JIS規格のVCTキャブタイヤケーブルの5.5mm2(通称5.5スケ/5.5SQ)のケーブルを使っていました(VCTという規格の名称を明示していなかったので混乱した人が多かったと思います)。
VCTは屋内仕様の電力用電線ケーブルで、耐圧が600Vのものです。
なぜ600Vかというと、それを超えると高電圧となって、規格が変わるという、変わり目だからです。
長岡派は、こぞって5.5スケのVCTを使っていました。
私も、同じ5.5スケのVCTを使っていましたが、太すぎて使いにくいので、その後、3.5スケになり、2スケのVCTFになりました。
VCTFもVCTと同じく屋内仕様の電力用ですが、こちらは耐圧が300Vで、VCTよりもひとまわり細いものです。
それから更に時間が経ち、定説を信じなくなったので、いまは、0.5スケの一番安い電線を使用しています。
それで、音が変わったのか、というと、私にはよくわからないので、きっとこれでいいのでしょう。
それでもメーター50円するので、ちょっと高価かなと思っています。

私の説はさておいて、ケーブルで音が変わるという主張の裏付けとなる理論というのは、定性的(しかも演繹的)な理由以外は、ほぼ何もありません。
演繹的というのは、xxxがxxxだからこれをxxxするとxxxになるはずである、といったもので、定性的にはこのほうが良さそうだ、という意味しかありません。
このような定性的な説は、工業的には意味がありません。
工業的に意味があるのは、数字で表現される場合に限ります。
理論が確立されておらず、数字での表現が難しい(できないのではなく、とっても面倒で実用的ではないという意味)場合には、理論の部分はさておいて、結果の部分を数字や検証で示します(検証が曲者の場合もありますが)。
計算上では誤差範囲に入ってしまうし、測定器でも測定できる差は、可聴帯域外のインピーダンス特性と直流抵抗値くらいのものです。
抵抗値も1mくらいだったら、端子の接触抵抗より小さいし、断面積を増やせば抵抗値は下がるし、この差が何なのかというとよくわかりません。
導体は温度が上がると抵抗値が上がるので、気温が変わったら抵抗値が変わって音が変わるはずですが、そういう意見は聞きません。
簡単に言えば、スピーカーケーブルを産業用のケーブルに代用したって、可聴帯域の特性に差がでないようにできるということです。
しかし、高級ケーブルは、(高級ケーブル同士であっても)差があるという数多くの証言と、心理効果によって支えられているみたいです。
メーカーもブラインドテストで差を検証するということはしません。
目をつぶっても分かる差だったら良いのですが、わからない場合には、本当に分からないのかを検証する手法がブラインドテストと呼んでも良いと思います。

こう書いてみると、ケーブルの効果に関する議論は、ナントカ慰安婦問題とそっくりでした。
『数多くの証拠がある』→30億円もかけてアメリカ政府が調査したのに証拠はひとつも発見されなかったし、誰もその証拠を出してこない。
『証言が証拠だ』→本人の証言だけがあります。見た人はいないみたいです。実際にそんなことがあれば大騒ぎだったでしょうに。
『悪いものは悪い』→日本軍有難う、という証言はたくさんあるみたいですが..
こんなこと書いてると、オーディオレイシストだとか叩かれそうなのでやめておきましょう。

ケーブルの違いは、針金ハンガーと持参した高級ケーブルとの差をブラインドテストで決着を付けようという試みもあるし、『差を聞き分けられたらン千万円さし上げよう』ということをやった人もいるみたいだし、オーディオケーブルのブラインドテストって難しいのですよね。
テスト環境を整えるのにン千万円の装置が必要でしょうし、そんな機材持ってませんし。


by mcap-cr | 2017-02-20 22:10 | オーディオ一般 | Trackback | Comments(0)

生演奏を主とすれば、オーディオは箱庭で充分でしょう。