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はこにわオーディオ工学研究分科会 (旧名: バスレフ研究所)

音場空間

オーディオマニア向けのソフトに、音をとにかくきれいに、粒立ちを良く録音したものがあります。
そういうソフトは、音場空間の捕捉という目的ではなく、音を個別に捉えるということを目的にしています。
このブログでも紹介している某さんの説明を借用すると、ドラムに耳付けて、ピアノに頭突っ込んで...(マルチ録音のこと)のような音はあり得ない、ということです。
実際に、ホールで音楽を聞いていると、オーディオマニア向けの分離した音、なんていうことは絶対になく、音が混じって、それがハーモニーとなって体全体が包まれます。
私の場合は、生が第一なので、生に近い感じを目指します。
しかし、考えているうちに、必ずしもそうではない、と思うようになりました。
というのは、江戸時代の絵画にも、俯瞰して描いたあり得ない作品もあるし、西洋美術作品だって、ピカソが開きのように複数の方向から描いたように、見たとおりに描かれているわけではありません。
見たとおりに描かないのには理由があり、そのことによって、別な意味を持たせることもこともあります。

録音は、人類史の中では比較的新しい技術になるので、録音技術を使った芸術表現もある、というのが正しい考え方なのでしょう。
自分の場合は、どちらかというとクラシックな人間なので、キュビズムよりも古典的な作品のほうが好きです。
まずは、芸術という形を、本来のそのままの形に近く表現されたもののほうが好ましい、という立場をとります。
これは、意見の違いなのでどちらが正しいか、という結論はありません。
しかし、音楽を録音技術を使って新しい形で表現するという立場をとると、辻褄の合わないことが出てきます。

録音は、演奏のコピーと解釈することが可能ですが、同じように絵画をコピーするとなると、マルチ録音は、本来見えない部分を反対側から見て書き足したり、新たな輪郭を書き加えたり...というような加工をするということになります。
音場空間を捉えようとする録音は、フォトコピーに相当するということになります。

しかし、マルチ録音は、本来ないはずのものを、録音技術により書き加えたコピーのようなコピーでないようなもの、ということも可能でしょう。
アイドルの音楽などは、演奏者本人の解釈などある意味どうでもよく、プロデューサーが作り出すものなので、プロデューサの意図が最優先となるので、マルチトラックの録音や、録音に生を重ねるような、生ではあり得ないような収録は当然のことになります。

これに対して、古典演奏の場合には、どうなのだろうか、と考え込んでしまうわけです。
それに、演奏のコピーを録音の技術で書き足したりすることが正しいなら、再生側で変質させてしまうこともまた正しい施行ということになります。
これって、オーディオ再生技術の否定なのではないのかな???


by mcap-cr | 2017-03-12 15:53 | オーディオ一般 | Trackback | Comments(6)
Commented by kaneya at 2017-03-14 20:34 x
分かるところもあり、反論もありという感じですね。

クラシックのホールでの演奏は確かに芸術作品で、それだけで完成されています。ですから、それを聞きたいなら、録音したものよりもホールでの実演を選ぶべきでしょう。

私はロックを入り口に、プログレ、フュージョン、ジャズと聞くようになった人間ですから、LPやCD、DVDの中に作り上げられた音楽が作品という立場です。現実のホール空間をキャンバスとするか、LPやCDなどをキャンバスとするかの違いで、ミキシングはそのキャンバスで利用できる道具なんだろうと思います。

モルゴーア・クァルテットという、プログレを弦楽四重奏で演奏している集団がいますが、あの少人数でロックの荒々しさを表現するために、楽器のそばにマイクを付けて演奏しています。これも、演奏者自身が選んでいることなので、オンマイク録音をおかしいというのも・・・・と、どちらかと言うとクラシック嫌いの私は思ったりします。

多重録音を駆使して、ボヘミアン・ラプソディという名曲を作ったクイーンは、その多重録音部分はステージで再現できないため、テープを流し、メンバーの着替えの時間になったという話もありますが、・・・・・、ライブでは表現できない表現がLPやCD内で出来るのだったら利用しようとするアーティストが出ても不思議ではありませんし、それでいいのではとも思います。
Commented by mcap-cr at 2017-03-14 22:36
kaneyaさん
マルチ録音が良いという意見があることは承知のうえで、そのように書いています。
マイクをたくさん立ててそういう音作りを演奏者が意図するのであればそれでいいことです。しかし、そういう録音に対しては、再生側での正解がないので、さてどうしようかということになります。私はそんなものだと思って聞いています。
クィーンのお話は興味深いですが、単に休憩でも良さそうな...クィーン聞いたことないので...
Commented by hiro-osawa at 2017-03-15 02:46
本来マルチ録音、PAは、楽器の数が多くてワンポイントでバランスよく取り切れない、楽器によって音量差が大きいときにこの問題を解消するために始まったと思います。
オーケストラ演奏はソロが埋没しないように、全体構成、アレンジが初めから検討されています。例えばチューバやトランペットが鳴りまくっているときチェンバロのソロはふつうありません。
私はマルチマイク否定派ではありません。演奏場所、観客席により聞こえにくくなる楽器音程の無いようにバックアップする手段として必要です。
ただし行き過ぎなオンマイクで楽器の音を不自然にするのは良くないの意図で、また残響を抹消するのも好きでないのであの話を書きました。
Commented by mcap-cr at 2017-03-15 09:15
hiro-osawaさん
マルチマイクは、私も全面否定するものではないですが、やり過ぎは、音場空間の記録を否定することになるので、良いとは思えません。
勿論創作の手法として行うのであれば、それが正しい方法と思います(高忠実度と呼ぶには抵抗がありますが)。
音場を損なわない程度のマイクの追加は、現在の技術では止むを得ないと思います。
コンサートホールに行くと、ステージ前にマイクロホンが吊ってありますが、あれで記録しているのでしょうか?
いつも、絶妙な位置だと思って見ています。
Commented by hiro-osawa at 2017-03-16 01:51
あの吊ってあるマイクは、あまりこだわりのないイベントの記録に、ホールの設備として手軽に使用できるよう常設してあると聞いたことあります
楽器の数の多いときは高いとこからワンポイントで録るのは大変ですので便利みたいです
ジャズ、ロック、フォークなどの時は残響をこのマイクで追加することもあるそうです
Commented by mcap-cr at 2017-03-16 08:36
hiro-osawaさん
ホールにあるマイクの使い方を初めて知りました。
なるほど、特別な録音用ではないのですね。
あれで録音したソースを聞いてみたいです。

生演奏を主とすれば、オーディオは箱庭で充分でしょう。
by MCAP-CR

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