2017年 08月 03日
ダブルバスレフの公式(1)
公式だけが独り歩きして、その式を元に、アマチュアだけでなく、プロの人まで右往左往している、そんな現状が気になっていました。
私は、その公式を使ったことはありませんし、深く考えたこともありませんでした。
公式の出典がどこなのかわかりませんが、長岡先生の著書には度々登場します。
その公式とは次のようなものです。
まずは、第一共振周波数です。


第一共振周波数
『第一ダクトによるバスレフのfdに準ずるが、第二キャビネットの影響を受けて少し上昇する』
第二共振周波数
『第一、第二キャビネットを合算して、第一ダクトは単なる気流抵抗(わりと小さい)と見て、第二ダクトの共振を計算する』
では、上記の公式の物理学的な意味を考えてみます。
公式は、2つのポートの寸法についての説明がないので、多自由度バスレフで扱ってきた記号を用いて書き直してみます。
公式は、容積の単位をリットル、長さの単位をcmとしいますが、多自由度バスレフの式では、全てSI単位に統一してあるので、混乱ご容赦ください。
まず、第一共振周波数の式です。

公式のほうは、係数を160と説明抜きに書いてありますが、多自由度バスレフの計算をするときは、一般の熱力学の式を使っているので少し違います。
公式で使われているγは、ダクトの長さの補正値です。
補正した長さをL3として定義すれば、もっと簡単な式になります。
多自由度バスレフの式では、ダクトの長さは補正値を使うということにしてあり、ずっとシンプルな形になっています。
γは、空気の比熱比を表すのに使っています。
これは、一般の熱力学の教科書の記号に倣ったものです。
空気の比熱比(Cp/Cv)は、1.4で、上記の式は、断熱条件の式になります。
等温条件を使う場合には、比熱比を1.0とした場合と同じになります。
一般的には、断熱条件が正しいとされています。
その他、ρは、空気の密度(1.2kg/m3)、Pは大気圧(101.3kPa)です。
では、公式の係数である160はどうなっているのか、というと、上記の式で計算すると、どちらでもありません。
容積と長さの単位を公式系に変え、係数をαとして書き直してみます。

このようなモデルには、限界があるので、完全一致することは、まずあり得ません。
おそらく160が実験値に近いのだと思います。
『理論的にXXXになります。』等と断定的に書くような人は、モデルまで遡って検討したことのない人でしょう。
公式だけ覚えてきた人は、理屈を考えずに、試験結果として正解だったかどうかだけを重視するので、断定的なな書き方をしがちです。
どのようなモデルにも限界があるので、100%理論的というのは、まずありえないことです。
では、第一共振周波数の副空気室による修正にはどのような意味があるのかというと、これは、ダクトのなかの空気塊をひとつの質点として見た場合に、主空気室の空気ばねと副空気室の空気ばねにより拘束されるという意味になります。
簡単に言えば、主空気室と副空気室とのバネ効果を加算したという式です。
わかりやすく書けば下記のようになります。


この先に、いろいろと面倒な議論がありそうです。
次に続きます。

