アマチュアの工夫処
オーディオ機器は、電気系と機械系とに分けて考えることができます。
電気系機器には、アンプ、プレーヤー類があり、機械系機器には、スピーカーシステムがあります。
ここで、スピーカーシステムをわざわざ機械系機器と呼んだのは、スピーカーシステムだけが、空気を扱う機器だからです。
スピーカーシステムは、空気に粗密を作り出す機器です。空気に粗密ができると、空気によるバネの効果で、密の部分から粗の部分へと空気が移動して粗密のない安定した状態を作ろうとします。
このような空気の粗密が気圧の変動波となって鼓膜や体表面等を刺激し、それが音として脳に認知されます。
空気は、流体力学的に扱うと、圧縮性流体なので、水のように、圧縮性が小さいために非圧縮性として扱う流体の運動方程式が複雑です。また、空気が変位する速度が遅いと粗密の差ができにくいため、周波数の小さな低音は、変位量を大きくするか、変位する面積を増やして、粗密が維持できるようにしなければなりません。
空気の流体力学的挙動に着目すると、複雑な方程式を解かなければならないのですが、実際には、こんな物理学的なアプローチは殆どありません(オーディオ業界では皆無と言って良いでしょう)。
私が紹介している運動方程式モデルも、流体力学の"り"の字もないくらい簡略化したモデルですが、その程度のモデルでさえオーディオ業界に殆どないというのは、オーディオ業界が、一般の技術水準から乖離している証拠でもあります。
電気系機器もアマチュアが工夫する余地はありますが、パーツの品質も回路も行き着くところまでいった感があり、電子回路の開発や工作で頑張っても、差をつけるのは難しいと思います。
逆に言えば、大きな差があったら、どちらかまたは両方が間違っているとも云えます。
ましてや、電線を工夫したところで(リード線のように振動が電気信号としてノイズとなる場合は別ですが)、計測可能な差を出すのは殆ど不可能というか、意味がありません。
直流抵抗は下げられますが、それには、材質を替えるより、断面積を増やすほうが簡単です。
また、インダクタンスは形状を変えれば変えられますが、増やすだけなので意味がなく、キャパシタンスも被覆線で変えられますが、並列にコンデンサーを繋ぐようなものなので意味があるかどうかわかりません。
ということで、もはや、工夫できるのは、機械系機器が中心となってしまいました(電気が得意な方は違うというでしょうが、それが音の差として人間が検知できるかは別の話です)。
このため、アマチュアは、スピーカーシステムの工夫に注力するようになったのだと思います。
また、スピーカーユニットそのものを工夫するのは簡単ではないので、箱を工夫するのがふつうです。
箱の機能は、振動板が作り出した空気の粗密を維持することです。
空気の粗密を維持する方法として、まず、バッフルがあり、バッフルを無限大に拡張したモデルの大型密閉箱があります。
ローエンドの伸びを犠牲にする代わりに実用的な低音域の音圧を上げられるようにしたのがシングルバスレフです。
バックロードホーンは、シングルバスレフのダクトをホーンにしたような形で、広い周波数帯域にわたって、空気の粗密を維持するよう工夫した方式ともいえます。
共鳴管方式は、少し違って、振動板で、共鳴管を共鳴させる方式です。
MCAP-CRは、バスレフを拡張して、共振点を多重化して、ローエンドを延ばしたり、シングルバスレフで耳につく癖を減らした方式です。
ちょっとむずかしいのは、石田さんのバックロードバスレフで、副空気室に抵抗を付けて、副空気室のバネの効果をブロードに広げた(バネ定数が周波数に応じて変わる)、アナログ的動作のダブルバスレフなのではないかと思います。
それまでも、ダクト部分に抵抗を付けて共振点のピークを抑えたスリットダクトのバスレフ等はありましたが、石田式バックロードバスレフは、バネ部分の動作を周波数によって、バネ定数が変わるような動作にした方式ではないのかと思います。
わかりにくいですが、ダクトに抵抗を付ける方式ではなく、空気バネを工夫した方式なので、ロスがすくなく効率が高いのではないかと考えています(あくまでも仮説ですが)。
以前は、石田式BHBSは、バックロードホーンに近い方式だと思っていましたが、いまは、バスレフに近い方式だと解釈しています。
こうやっているうちに、箱の技術は、アマチュアがメーカーを超えてしまったようです。
今後は、益々箱の工夫が進んでゆき、メーカーがアマチュアを追いかける展開になってゆくでしょう。
電気系機器には、アンプ、プレーヤー類があり、機械系機器には、スピーカーシステムがあります。
ここで、スピーカーシステムをわざわざ機械系機器と呼んだのは、スピーカーシステムだけが、空気を扱う機器だからです。
スピーカーシステムは、空気に粗密を作り出す機器です。空気に粗密ができると、空気によるバネの効果で、密の部分から粗の部分へと空気が移動して粗密のない安定した状態を作ろうとします。
このような空気の粗密が気圧の変動波となって鼓膜や体表面等を刺激し、それが音として脳に認知されます。
空気は、流体力学的に扱うと、圧縮性流体なので、水のように、圧縮性が小さいために非圧縮性として扱う流体の運動方程式が複雑です。また、空気が変位する速度が遅いと粗密の差ができにくいため、周波数の小さな低音は、変位量を大きくするか、変位する面積を増やして、粗密が維持できるようにしなければなりません。
空気の流体力学的挙動に着目すると、複雑な方程式を解かなければならないのですが、実際には、こんな物理学的なアプローチは殆どありません(オーディオ業界では皆無と言って良いでしょう)。
私が紹介している運動方程式モデルも、流体力学の"り"の字もないくらい簡略化したモデルですが、その程度のモデルでさえオーディオ業界に殆どないというのは、オーディオ業界が、一般の技術水準から乖離している証拠でもあります。
電気系機器もアマチュアが工夫する余地はありますが、パーツの品質も回路も行き着くところまでいった感があり、電子回路の開発や工作で頑張っても、差をつけるのは難しいと思います。
逆に言えば、大きな差があったら、どちらかまたは両方が間違っているとも云えます。
ましてや、電線を工夫したところで(リード線のように振動が電気信号としてノイズとなる場合は別ですが)、計測可能な差を出すのは殆ど不可能というか、意味がありません。
直流抵抗は下げられますが、それには、材質を替えるより、断面積を増やすほうが簡単です。
また、インダクタンスは形状を変えれば変えられますが、増やすだけなので意味がなく、キャパシタンスも被覆線で変えられますが、並列にコンデンサーを繋ぐようなものなので意味があるかどうかわかりません。
ということで、もはや、工夫できるのは、機械系機器が中心となってしまいました(電気が得意な方は違うというでしょうが、それが音の差として人間が検知できるかは別の話です)。
このため、アマチュアは、スピーカーシステムの工夫に注力するようになったのだと思います。
また、スピーカーユニットそのものを工夫するのは簡単ではないので、箱を工夫するのがふつうです。
箱の機能は、振動板が作り出した空気の粗密を維持することです。
空気の粗密を維持する方法として、まず、バッフルがあり、バッフルを無限大に拡張したモデルの大型密閉箱があります。
ローエンドの伸びを犠牲にする代わりに実用的な低音域の音圧を上げられるようにしたのがシングルバスレフです。
バックロードホーンは、シングルバスレフのダクトをホーンにしたような形で、広い周波数帯域にわたって、空気の粗密を維持するよう工夫した方式ともいえます。
共鳴管方式は、少し違って、振動板で、共鳴管を共鳴させる方式です。
MCAP-CRは、バスレフを拡張して、共振点を多重化して、ローエンドを延ばしたり、シングルバスレフで耳につく癖を減らした方式です。
ちょっとむずかしいのは、石田さんのバックロードバスレフで、副空気室に抵抗を付けて、副空気室のバネの効果をブロードに広げた(バネ定数が周波数に応じて変わる)、アナログ的動作のダブルバスレフなのではないかと思います。
それまでも、ダクト部分に抵抗を付けて共振点のピークを抑えたスリットダクトのバスレフ等はありましたが、石田式バックロードバスレフは、バネ部分の動作を周波数によって、バネ定数が変わるような動作にした方式ではないのかと思います。
わかりにくいですが、ダクトに抵抗を付ける方式ではなく、空気バネを工夫した方式なので、ロスがすくなく効率が高いのではないかと考えています(あくまでも仮説ですが)。
以前は、石田式BHBSは、バックロードホーンに近い方式だと思っていましたが、いまは、バスレフに近い方式だと解釈しています。
こうやっているうちに、箱の技術は、アマチュアがメーカーを超えてしまったようです。
今後は、益々箱の工夫が進んでゆき、メーカーがアマチュアを追いかける展開になってゆくでしょう。
by mcap-cr
| 2017-03-25 15:47
| 工作
|
Trackback
|
Comments(0)
最新の記事
公金ちゅーちゅーばー |
at 2023-06-01 06:07 |
ひいきのお店が戻っていました |
at 2023-05-31 06:14 |
加古隆のコンサートに行ってき.. |
at 2023-05-29 06:45 |
脳内メモリの呼出し機能 |
at 2023-05-28 09:15 |
オーディオ趣味の2極化 |
at 2023-05-25 08:08 |
耳の自主検査 |
at 2023-05-22 12:23 |
EVどうなるか |
at 2023-05-18 20:14 |
decideとdetermine |
at 2023-05-17 06:57 |
製造元 |
at 2023-05-16 06:09 |
時代遅れ |
at 2023-05-14 07:04 |
I am I |
at 2023-05-12 06:16 |
Me Too |
at 2023-05-09 12:35 |
対数 |
at 2023-05-08 05:58 |
見た目 |
at 2023-05-07 07:48 |
久しぶりのオーディオ |
at 2023-05-06 07:15 |
効率は非効率 |
at 2023-05-05 06:34 |
ちょっとずつ合わない |
at 2023-05-04 13:59 |
Chat GPT使ってみたが.. |
at 2023-05-03 07:33 |
A3複合機注文した |
at 2023-05-01 19:07 |
分からないマニュアル |
at 2023-04-30 09:58 |
以前の記事
2023年 06月
2023年 05月
2023年 04月
2023年 03月
2023年 02月
2023年 01月
2022年 12月
2022年 11月
2022年 10月
2022年 09月
2022年 08月
2022年 07月
2022年 06月
2022年 05月
2022年 04月
2022年 03月
2022年 02月
2022年 01月
2021年 12月
2021年 11月
2021年 10月
2021年 09月
2021年 08月
2021年 07月
2021年 06月
2021年 05月
2021年 04月
2021年 03月
2021年 02月
2021年 01月
2020年 12月
2020年 11月
2020年 10月
2020年 09月
2020年 08月
2020年 07月
2020年 06月
2020年 05月
2020年 04月
2020年 03月
2020年 02月
2020年 01月
2019年 12月
2019年 11月
2019年 10月
2019年 09月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 04月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2023年 05月
2023年 04月
2023年 03月
2023年 02月
2023年 01月
2022年 12月
2022年 11月
2022年 10月
2022年 09月
2022年 08月
2022年 07月
2022年 06月
2022年 05月
2022年 04月
2022年 03月
2022年 02月
2022年 01月
2021年 12月
2021年 11月
2021年 10月
2021年 09月
2021年 08月
2021年 07月
2021年 06月
2021年 05月
2021年 04月
2021年 03月
2021年 02月
2021年 01月
2020年 12月
2020年 11月
2020年 10月
2020年 09月
2020年 08月
2020年 07月
2020年 06月
2020年 05月
2020年 04月
2020年 03月
2020年 02月
2020年 01月
2019年 12月
2019年 11月
2019年 10月
2019年 09月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 04月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
最新のコメント
> somo_somoさ.. |
by mcap-cr at 19:22 |
帝国データバンク調べで新.. |
by somo_somo at 13:38 |
> somo_somoさ.. |
by mcap-cr at 18:53 |
個人的にはEVの評価はバ.. |
by somo_somo at 15:38 |
> マイクロ・トレーダー.. |
by mcap-cr at 07:52 |
“I’m not any.. |
by マイクロ・トレーダー at 22:43 |
> tincanさん .. |
by mcap-cr at 18:55 |
ハイファイ志向の方はおカ.. |
by tincan at 09:37 |
> tincanさん .. |
by mcap-cr at 17:24 |
マッキンと言えば・・・五.. |
by tincan at 14:54 |
最新のトラックバック
検索
ファン
記事ランキング
画像一覧
イラスト:まるめな