多自由度スピーカーシステムのチューニング
今日は、調整についての工学的アプローチについて書きたいと思います。
設計する機械装置が、ベストのパフォーマンスとなるように、プロセスへの入力などを調整することが必要になることがあります。工学的に望まれる(必須と言って良い)調整方法の条件とは、
チューニングとも言えないですが、設置場所に設置するという条件の設計時には、現地の寸法を測りきれていなかったり、製作精度が不確かだったり、関係ないところでの抜けや間違いが想定されたりするので、どこかに自由度を持たせるのがふつうです。自由度なしに製作してしまって現地に持ち込んでも、現場にフィットせずにお持ち帰りなんて洒落になりません。
以前、あるスピーカー屋さんのシステムの脚部を見たときに、システム1本の脚を4本のボルトで調整するようになっていました。
エンジニアからは、こういう設計は、素人臭く見えます。
機器を床に設置する場合に、3点であれば必ず全ての点が床面につきます。
そこで、必ず水平を出そうと考えるのであれば、3点のうち2点を調整可能にしておけば、水平設置することが可能です。三脚と同じですね。
3点で安定性が足りないのであれば、4点にしてもよいですが、そこで水平を出すためには、3点だけを調整可能にすれば足ります。4点調整可能にすると高さも調整しなければなりません(まさにどツボにハマる感じ)。
それでも面倒なので、自分の場合は、更に簡略化します。
床面は多少の凸凹はありますが、殆どの場合、全体的には水平と見ても差し支えないので、スピーカーシステムの場合には、3点だけ短い脚を付けておけば、どこに置いても安定します。
3点で不安なのであれば、4点とし、そのうちの1点だけ調整可能にしておけば、4点全部を床面に設置させることができます。この場合、設置の水平度は、床の水平度と同等ですが実用上は問題ないでしょう。
こういうのが、工学的にはよく使われるチューニングの方法です。
3点固定+1点調整、という手法なら、調整するところが一箇所なので、誰でも簡単に調整でき、更に、調整の結果が一通りに定まります。
これに対して4点調整にしてしまうと、高さがどうで、水平度がどうで....となって時間がかかるし、システムを少し移動させただけで全部やり直しで面倒です。床と同程度の水平で満足できない人は3点調整可能にし、さらに左右の高さがほんのすこし違っても気になる人は、レーザー墨出し器とかを使って正確に調整すれば良いでしょう(10万ちょっとで買えるので、電源ケーブル1本くらいのものですよ~)。
しかし、そこまで気にするなら、聞く人の頭も動かせないので、自分を固定する治具が必要です(ああ嫌だ!)。
過大な自由度と過大な精度を追い求める設計は、調整が大変なので、エンジニアはすごく嫌います。
すなわち、最低限の自由度と必要十分な精度が必要であって、オーバースペックは害しかありません。
私自身、多自由度バスレフ型というチューニングの難しいシステムを作っている訳ですが、これを、フレキシブルに調整可能にすると、ダクトの断面積、長さや空気室の容量の組み合わせが無数にあるので、調整し切ることは不可能でしょう。
このため、私は、基本的には調整機構を付けません。
どうしても調整で追い込むつもりがあるのであれば、ダクトだけを調整可能にするか交換可能にします。
主空気室の内容積は、何かを突っ込めば小さくできるので、ここは大きく作っておいてもよいでしょう。
副空気室の容積を変更可能にするためには、点検パネルを作っておかなければならないのですごく面倒です。
ダクトは、断面積を小さくするのは簡単ですが、大きくするには、着脱可能なフランジ付で作らなければなりません。これは、実用的ではありません。
こんな理由で、私は、チューニングをできるだけ実施しないで済むよう、シミュレーションプログラムを作成しました。
このプログラムを使えば、かなり多くの設計を一度にシミュレーションできますが、それを比較してどの辺を設計の着地点にするかを決めるだけでも面倒です。
ですから、無数の設計を検証するのではなく、実用的な制約を設けて設計の自由度を減らします。
実用的な制約とは、全体サイズであったり、入手可能な管のサイズであったり、振動板の面積に対して自分で設定した設計範囲であったりします。
また、最近は、ダクトを長くすると効率が落ちるし、工作が面倒になるので、なるべく短くなるように設計するようになりました。
多自由度バスレフで遊んでみたい方は、是非ともシミュレーションプログラムを使って設計の着地点を探ってみてください。
シミュレーションプログラムは下記にあります。
http://mcap.webcrow.jp/software_jp.html
この中のcode004Jが、複数の設計を同時にシミュレーションするプログラムです。
Windows用の実行ファイルとDLLを含んでいますが、C言語のソースが付いているので、Linux、iOS、Android、MAC OSでもコンパイルすれば使えると思います。もちろんUNIXやVMS等のワークステーションやスーパーコンピュータで計算させることも可能です(誰もそんなことはしませんが)。Linuxは、64ビットのGCCコンパイラを使えるので簡単です。CUI(コマンドラインから実行する方法)ですが、計算が早いし、マニュアルも付けてあります。
Windows版は、フリーのMinGWでコンパイルしてありますが、32ビットなのでLinuxに比べると計算実行速度が遅くなってしまいます(大した問題ではありませんが念のため)。

オーディオ趣味にも工学的アプローチは必要なのだと思います。
目的に対してオーバースペックな趣向はやめましょう。
設計する機械装置が、ベストのパフォーマンスとなるように、プロセスへの入力などを調整することが必要になることがあります。工学的に望まれる(必須と言って良い)調整方法の条件とは、
- チューニングパラメータが必要最低限である(完璧な十分は狙わない)
- チューニングの手順と終了条件が定められている
チューニングとも言えないですが、設置場所に設置するという条件の設計時には、現地の寸法を測りきれていなかったり、製作精度が不確かだったり、関係ないところでの抜けや間違いが想定されたりするので、どこかに自由度を持たせるのがふつうです。自由度なしに製作してしまって現地に持ち込んでも、現場にフィットせずにお持ち帰りなんて洒落になりません。
以前、あるスピーカー屋さんのシステムの脚部を見たときに、システム1本の脚を4本のボルトで調整するようになっていました。
エンジニアからは、こういう設計は、素人臭く見えます。
機器を床に設置する場合に、3点であれば必ず全ての点が床面につきます。
そこで、必ず水平を出そうと考えるのであれば、3点のうち2点を調整可能にしておけば、水平設置することが可能です。三脚と同じですね。
3点で安定性が足りないのであれば、4点にしてもよいですが、そこで水平を出すためには、3点だけを調整可能にすれば足ります。4点調整可能にすると高さも調整しなければなりません(まさにどツボにハマる感じ)。
それでも面倒なので、自分の場合は、更に簡略化します。
床面は多少の凸凹はありますが、殆どの場合、全体的には水平と見ても差し支えないので、スピーカーシステムの場合には、3点だけ短い脚を付けておけば、どこに置いても安定します。
3点で不安なのであれば、4点とし、そのうちの1点だけ調整可能にしておけば、4点全部を床面に設置させることができます。この場合、設置の水平度は、床の水平度と同等ですが実用上は問題ないでしょう。
こういうのが、工学的にはよく使われるチューニングの方法です。
3点固定+1点調整、という手法なら、調整するところが一箇所なので、誰でも簡単に調整でき、更に、調整の結果が一通りに定まります。
これに対して4点調整にしてしまうと、高さがどうで、水平度がどうで....となって時間がかかるし、システムを少し移動させただけで全部やり直しで面倒です。床と同程度の水平で満足できない人は3点調整可能にし、さらに左右の高さがほんのすこし違っても気になる人は、レーザー墨出し器とかを使って正確に調整すれば良いでしょう(10万ちょっとで買えるので、電源ケーブル1本くらいのものですよ~)。
しかし、そこまで気にするなら、聞く人の頭も動かせないので、自分を固定する治具が必要です(ああ嫌だ!)。
過大な自由度と過大な精度を追い求める設計は、調整が大変なので、エンジニアはすごく嫌います。
すなわち、最低限の自由度と必要十分な精度が必要であって、オーバースペックは害しかありません。
私自身、多自由度バスレフ型というチューニングの難しいシステムを作っている訳ですが、これを、フレキシブルに調整可能にすると、ダクトの断面積、長さや空気室の容量の組み合わせが無数にあるので、調整し切ることは不可能でしょう。
このため、私は、基本的には調整機構を付けません。
どうしても調整で追い込むつもりがあるのであれば、ダクトだけを調整可能にするか交換可能にします。
主空気室の内容積は、何かを突っ込めば小さくできるので、ここは大きく作っておいてもよいでしょう。
副空気室の容積を変更可能にするためには、点検パネルを作っておかなければならないのですごく面倒です。
ダクトは、断面積を小さくするのは簡単ですが、大きくするには、着脱可能なフランジ付で作らなければなりません。これは、実用的ではありません。
こんな理由で、私は、チューニングをできるだけ実施しないで済むよう、シミュレーションプログラムを作成しました。
このプログラムを使えば、かなり多くの設計を一度にシミュレーションできますが、それを比較してどの辺を設計の着地点にするかを決めるだけでも面倒です。
ですから、無数の設計を検証するのではなく、実用的な制約を設けて設計の自由度を減らします。
実用的な制約とは、全体サイズであったり、入手可能な管のサイズであったり、振動板の面積に対して自分で設定した設計範囲であったりします。
また、最近は、ダクトを長くすると効率が落ちるし、工作が面倒になるので、なるべく短くなるように設計するようになりました。
多自由度バスレフで遊んでみたい方は、是非ともシミュレーションプログラムを使って設計の着地点を探ってみてください。
シミュレーションプログラムは下記にあります。
http://mcap.webcrow.jp/software_jp.html
この中のcode004Jが、複数の設計を同時にシミュレーションするプログラムです。
Windows用の実行ファイルとDLLを含んでいますが、C言語のソースが付いているので、Linux、iOS、Android、MAC OSでもコンパイルすれば使えると思います。もちろんUNIXやVMS等のワークステーションやスーパーコンピュータで計算させることも可能です(誰もそんなことはしませんが)。Linuxは、64ビットのGCCコンパイラを使えるので簡単です。CUI(コマンドラインから実行する方法)ですが、計算が早いし、マニュアルも付けてあります。
Windows版は、フリーのMinGWでコンパイルしてありますが、32ビットなのでLinuxに比べると計算実行速度が遅くなってしまいます(大した問題ではありませんが念のため)。

目的に対してオーバースペックな趣向はやめましょう。
by mcap-cr
| 2017-03-31 21:12
| スピーカー設計
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