設計と意匠
ナントカArchitectureと名前の付いた学科を卒業しておりますが、その後は機械関係の仕事が多かったので、最近は、機械を専門にしていると思っています。
先日は、Stereo誌のコンテストには、意匠部門とかイロモノ部門みたいのがあるほうがいいのではないかと書きました。
世の中には、建築家という職業がありますが、設計家という職業は聞いたことがありません。
建築設計については、ときどきコンペとかが行われていて、東京オリンピックでも、当初は、ザハの建築設計が、要項に違反しているのに採用されたと問題になっていました。
ザハの場合には、予算不足で結局ご破産になった経緯がありますが、元々、はみ出すべきでないところにはみ出していたり、構造設計がよく分からなかったりで、いろいろと指摘されていました。
建築家という職業の人にもいろいろあるようで、構造強度を予算の範囲内で満たさなければダメだという人も、意匠が格好良ければ、構造強度や予算は下々の設計者が考えればいいと思う人もいるのではないかと勝手に想像しています。
生産機械の設計という目から見ると、最高の設計美は、構造と機能がそのまま形になったものだと考える人が多いのではないかと推察します。
意匠は二の次で、構造強度と機能が制約を満たさない限り、機械の価値はゼロに近いので、意匠を考える人は、生産機械とかでなく、自動車の設計者のように意匠が売上に結び付く製品の設計者ではないかと思います。
下の写真は、10年ほど前に、ヴェネツィアで撮影したものです。
教会の塔から見ると遠くに石油の精製設備が見えます。
手前は、古いヴェネツィアの町並みで、その奥の霞のかかった先に、石油精製設備が見えます。
これを見て、う〜〜んと首をかしげてしまう人もいれば、意匠の優れた建築美と機械の機能美が同じ写真に収まってお互いに引き立て合っていると思う人がいるかもしれません。
後者は私のようにひねくれた人しかいないかもしれませんが。
機械の場合は、極限まで美しく設計されているものは、これ以上引いてしまったら成り立たないという極限の設計だと考えています。
製油所の設備などは、機能と構造強度がそのまま形になっており、機能美の極限に近いものではないかと思います。
それに対して、ヴェネツィアの建築物は、機能の中に何を含めるかで議論が起こりそうなものです。
ヴェネツィアの建物の多くは、カトリックと関連付いているので、機能の中には、宗教の厳格化、聖域化といったものも含まれると理解しています。
と解釈すると、この町並みも、すべてが機能を満たすために存在するものであり、これも極限の機能美と解釈できるのだと思います。
特に昔は、今のような情報社会ではなかったので、身近な人としか交流することができませんでした。
そうすると、宗教家の側でも、如何にわかりやすく権威化するかが重要です。
この時代の建築物は、意匠に優れていますが、その意匠は同時に機能でもあった訳で、機能と結びつかない意匠というものはなかったと思います。
現代のようにカトリックの権威が下がって身近な宗教になってくると、ペレのコンクリート製の教会のような機能美が台頭してきます。
個人的にはペレの教会のような極限まで削ったものを高く評価しますが、そこまでくるのにも、ヴェネツイアの教会のような意匠が必要だったのだろうと思います。
上の写真は、ペレのサン・ジョセフ教会です。
機能と関係ない部分の意匠に凝ったものは単にイロモノなのではないかと思います。
スピーカーシステムもそんな感じなのかな?
先日は、Stereo誌のコンテストには、意匠部門とかイロモノ部門みたいのがあるほうがいいのではないかと書きました。
世の中には、建築家という職業がありますが、設計家という職業は聞いたことがありません。
建築設計については、ときどきコンペとかが行われていて、東京オリンピックでも、当初は、ザハの建築設計が、要項に違反しているのに採用されたと問題になっていました。
ザハの場合には、予算不足で結局ご破産になった経緯がありますが、元々、はみ出すべきでないところにはみ出していたり、構造設計がよく分からなかったりで、いろいろと指摘されていました。
建築家という職業の人にもいろいろあるようで、構造強度を予算の範囲内で満たさなければダメだという人も、意匠が格好良ければ、構造強度や予算は下々の設計者が考えればいいと思う人もいるのではないかと勝手に想像しています。
生産機械の設計という目から見ると、最高の設計美は、構造と機能がそのまま形になったものだと考える人が多いのではないかと推察します。
意匠は二の次で、構造強度と機能が制約を満たさない限り、機械の価値はゼロに近いので、意匠を考える人は、生産機械とかでなく、自動車の設計者のように意匠が売上に結び付く製品の設計者ではないかと思います。
下の写真は、10年ほど前に、ヴェネツィアで撮影したものです。
教会の塔から見ると遠くに石油の精製設備が見えます。
手前は、古いヴェネツィアの町並みで、その奥の霞のかかった先に、石油精製設備が見えます。
これを見て、う〜〜んと首をかしげてしまう人もいれば、意匠の優れた建築美と機械の機能美が同じ写真に収まってお互いに引き立て合っていると思う人がいるかもしれません。
後者は私のようにひねくれた人しかいないかもしれませんが。
製油所の設備などは、機能と構造強度がそのまま形になっており、機能美の極限に近いものではないかと思います。
それに対して、ヴェネツィアの建築物は、機能の中に何を含めるかで議論が起こりそうなものです。
ヴェネツィアの建物の多くは、カトリックと関連付いているので、機能の中には、宗教の厳格化、聖域化といったものも含まれると理解しています。
と解釈すると、この町並みも、すべてが機能を満たすために存在するものであり、これも極限の機能美と解釈できるのだと思います。
特に昔は、今のような情報社会ではなかったので、身近な人としか交流することができませんでした。
そうすると、宗教家の側でも、如何にわかりやすく権威化するかが重要です。
この時代の建築物は、意匠に優れていますが、その意匠は同時に機能でもあった訳で、機能と結びつかない意匠というものはなかったと思います。
現代のようにカトリックの権威が下がって身近な宗教になってくると、ペレのコンクリート製の教会のような機能美が台頭してきます。
個人的にはペレの教会のような極限まで削ったものを高く評価しますが、そこまでくるのにも、ヴェネツイアの教会のような意匠が必要だったのだろうと思います。
機能と関係ない部分の意匠に凝ったものは単にイロモノなのではないかと思います。
スピーカーシステムもそんな感じなのかな?
by mcap-cr
| 2018-12-17 07:18
| 科学
|
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Comments(2)
Commented
by
uta
at 2018-12-17 12:20
x
僕は住宅を買ったのが比較的最近で
住宅の見学が好きだったこともあり、住宅メーカーから工務店まで多数見学にいきました
大手のメーカーはまず建物から決め、治る土地を割り当てます
僕が感心したのは、工務店と設計士がグループを作り販売している企業で
まず、土地を決めてから(収入に応じて建物の金額を決めるため)
建材をできる限りカットせず無駄なく使うことで費用を削減し
建築日数も人件費が効率よくなるよう調整
現場の作業員に派遣や日雇いは使わない
設計家と作るオーダーメイドの家
を売りにしていました
個人の感性から離れた部分では、文化の推移と思いますので
音の差を数値化できないのであれば、確かに評価部分を明確化するしかないかもしれませんね
住宅の見学が好きだったこともあり、住宅メーカーから工務店まで多数見学にいきました
大手のメーカーはまず建物から決め、治る土地を割り当てます
僕が感心したのは、工務店と設計士がグループを作り販売している企業で
まず、土地を決めてから(収入に応じて建物の金額を決めるため)
建材をできる限りカットせず無駄なく使うことで費用を削減し
建築日数も人件費が効率よくなるよう調整
現場の作業員に派遣や日雇いは使わない
設計家と作るオーダーメイドの家
を売りにしていました
個人の感性から離れた部分では、文化の推移と思いますので
音の差を数値化できないのであれば、確かに評価部分を明確化するしかないかもしれませんね
0
Commented
by
mcap-cr at 2018-12-18 06:12
> utaさん
いい建築設計のご自宅を購入されたのですね。
とても工学的に作られていると思います。
スピーカーシステムなどは、メーカーはどのようなコンセプトで作るかは自由ですが、音楽の友社のようなところでコンテストと称して競争させるなら、基準を示すべきだろうと思います。
ほぼ意匠だけで勝負という人が出るのは、どうなんだろうと思います。
いい建築設計のご自宅を購入されたのですね。
とても工学的に作られていると思います。
スピーカーシステムなどは、メーカーはどのようなコンセプトで作るかは自由ですが、音楽の友社のようなところでコンテストと称して競争させるなら、基準を示すべきだろうと思います。
ほぼ意匠だけで勝負という人が出るのは、どうなんだろうと思います。
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