2019年 01月 27日
有田正広&上原彩子~バロックからモダンへ~
そうすると、自宅に置いてあるパソコンでないとできない急な仕事の電話があり、午前中にいったん帰宅、仕事を済ませ、それから新橋で小用を済ませました。
その後、チケットを購入してあった、『有田正広&上原彩子~バロックからモダンへ~』を聞きに、東京文化会館小ホールに行きました。
有田さんはフルート奏者で、数々のコンクール受賞歴があり、現在は、昭和音楽大学の教授、桐朋学園大学の特任教授です。
上原さんは、2002年のチャイコフスキー国際コンクールのピアノ部門で1位を獲得した人です。
ピアノ部門としては、初の女性の優勝、同じく日本人として初の優勝でした。
現在は、東京藝術大学音楽学部早期教育リサーチセンターの准教授です。
チャイコフスキーコンクールのようなメジャーなコンクールを制覇した演奏者は、ノーベル賞を受賞した学者のようなもので、その後の演奏家生活が保証されたといっていいと思います。
有田さんは、数々のコンクール受賞歴があっても、メジャーではなかったようです。
メジャーでないコンクールであっても、受賞者の実力派凄いものですが、それだけではその後が保証されたというところまではいきません。
そのごコツコツと積み重ねてゆき、ようやく著名な演奏家として名を上げることができます。
さて、曲目は、前半がモーツアルトの作品を3曲、ピアノには、モーツァルト時代のフォルテピアノを復刻した楽器をを使用します。
最初は共演です。
フルートは控えめ、フォルテピアノも控えめな感じの演奏です。
フォルテピアノは、チェンバロのような甲高い感じの音で、強弱は表現できますが、単調な感じです。
二曲目はピアノのソロで、上原さんの本領発揮に近いところに来た感じです。
聴いていた位置がステージに向かって左側の端だったので、上原さんが有田さんに隠れて見えなかったのがソロになって背中が良く見えました。
面白いと思ったのは、フォルテピアノの低音は左側に大きく抜けることです。
東京文化会館小ホールのステージの後ろ側(ピアノの鍵盤に向かって左側)には、大きな屏風を横にしたような反射板が付いています。
低音が、左側のステージ付属反射板から跳ね返って聞こえてくるのに対し、高音は、ピアノ付属の反射板側から反射した感じに聞こえてきます。
フォルテピアノの筐体は、現代のピアノと比べて薄かったり弱かったりするのでしょうか?
前半を聴いていて、自分は著名な演奏家の演奏に心を入れ込む力がないのかと考えてしまいました。
東京音楽コンクールで聴いていると音楽が心に染み入ってくるのに対して、その演奏は、どうも心に入ってきません。
後半は、有田さんのソロから始まりました。
バッハの無伴奏フルートのためのソナタイ短調。
前半よりずっといいです。
バッハがモーツァルトよりいいのか、伴奏に合わせなくていいからか。
後半2曲目は、ブラームスのピアノのための6つの小品。ピアノソロです。
今度はスタインウェイに変わりました。
スタインウェイの響きは、モーツァルト時代のフォルテピアノとは別物です。
どこまでも美しく響き渡ってきます。
上原さんの演奏も、前半とはうって変わって生き生きとなめらかです。
ペダルはあまり使わず余韻を響かせます。
大家の演奏という感じで、東京音楽コンクールの出場者とは、ちょっと違いを感じます。
良し悪しとか好き嫌いとかではなく、自分のスタイルで自由に弾いている感じ。
テクニックにも余裕があります。
それと同時に、モーツァルトの時代にこのピアノがあったら全然違う曲を作曲したかもしれないと思いました。
また、その後の作曲家は、ピアノという楽器の進歩によって楽想も変わったのだろうと思いました。
この会場では、ピアノは何度も聴いてきたのですが、ほとんどが伴奏だったので、ソロは二度目てです。
伴奏で素晴らしい音楽を演奏された皆さんは、ソロだとどういう感じになるのか気になりました。
予定分の最後は、ライネッケのフルート・ソナタ『ウンディーネ』でピアノとフルートです。
フランクのヴァイオリンソナタのようなのんびり、ゆったりした感じの曲でした。
アンコールは、ドヴォルザークの『我が母の教えたまいし歌』とラフマニノフの『鐘』の2曲でした。
ラフマニノフは、さすが大家の上原さんらしい魅力のあふれた演奏でした。
上原さんの力強い演奏は、ラフマニノフの魅力を最大限引き出してくれました。
全部を聴いて思ったのは、2人の合わせはちょっと不十分かも...という感想でした。
どちらも単独では素晴らしいですが、いっしょになるとぎこちない感じがしました。
コンクールの声楽とか弦楽の二次予選では、多くの人が、ピアノ伴奏と息をぴったりに合わせてきます。
そういうピアノ伴奏を聴いて、ピアノの底力を知りましたが、今日は、そういう合せ技が弱く感じました。
もう地位を築いてしまうと忙しくてリハーサルの時間が十分にとれないということも想像できますが、せっかくのジョイントリサイタルなのですから合わせにもパフォーマンスを発揮して欲しいと思いました。
とっても良かったのは、それぞれの単独演奏でしたが、同時にピアノという楽器の進化と真価を知ることができたのも収穫でした。


