有冨萌々子・上田実季デュオリサイタル(2)
短い休憩時間を経て後半に入りました。
後半は、ボウエンのヴィオラソナタ第1番ハ短調です。
楽器は前半と変わって1773年製のPietro Antonio Landolfiです。
黄土色と焦げ茶色の縞模様の木目仕上げです。
前半の楽器は、濃い色に仕上げられた、よく見るタイプでしたが、後半のものは、色塩梅が違い、幾分薄く見えました。
前半の楽器の音色は、ヴァイオリンのローエンドを拡張して低音寄りにした感じの深々とした音でしたが、後半の楽器は、高音の輝きを抑えた落ち着いた音でした。
低音は、前半のものよりもやや薄く、高音もやや低い感じで、自分が元々イメージしていたヴィオラの音に近かったと思います。
楽器によって随分音が違うと感じました。
昨年の東京音楽コンクールの二次予選では、ヴィオラは有冨さんだけでしたが、ヴァイオリンの出場者が多く、音色の違いに戸惑いました。
そのときは、演奏者による音色の差のほうが大きいだろうと思っていましたが、楽器による差も相当にあったのかもしれません。
今回は、同じ演奏者で別な楽器び音を聴いたので、楽器の個体による音色の差を比較することができました。
同じリサイタルで楽器を変えたのは、先日、上原彩子さんのピアノでもありました(記事)。
そのときは楽器が違いすぎたのと、スタインウェイの凄さを感じました。
ヴィオラの差はピアノほど劇的なものではありませんでしたが、音色が思っていたよりも大きく違いました。
個人的な好みでは前半のものでした(聴いた人にしか分かりませんが)。
あとは、アンコールを演奏して頂けました。
演奏はピアノもヴィオラも素晴らしくとっても"Brave!"でした。
やなか音楽ホールは、想像していた通りの広さ(狭さ)で、演奏者と客席との位置が近いので、直接音がよく聞こえました。
文化会館の小ホール等では、間接音が混じっていい雰囲気が付加されますが、このホールでは、直接音が大きく勝っているので、音は楽器から明確な音場定位で聞こえました。
また、ヴィオラの音が相当に大きく感じました。
直接音をこれほどまでにはっきりと聴いたことが無かったのでいい経験になりました。
それぞれの楽器に分解して聴こうとするオーディオマニアにはこちらのほうがいいかもしれません。
私は、もう少し間接音が聞こえるほうが好みです。
しかし、ホールの選定は、興行の企画でもあります。
名前が世界中に知れ渡っている演奏家ならともかく、いくら名手であるとは言っても、これから羽ばたいていこうという演奏家が何百枚ものチケットを売り捌くのは容易ではありません。
会場費は高価で、やなか音楽ホールの場合で、午後半日で82,000円です。
会場が100名収容でチケット代は2000円に設定されているので、関係者を含まずに100枚全部を売り切ったとして収入はたったの20万円です(正確にいえば消費税を除いて185,185円)。
これから準備費用、スタッフへの謝礼などを引いていくと赤字でしょう。
演奏者本人には、ひょっとしたら場数を踏むための修行の一環という考えもあるかもしれませんが、赤字とか、全然もうけにならないというのではよろしくありません。
私がよく利用する東京文化会館小ホール(653席)でリサイタルを開けば、会場費が459,000円かかります。
この他に会場スタッフの人件費も必要でしょう。
チケット代を同じく2,000円として300人分売れたとしても60万円の収入で、やはり赤字になるでしょう。
2016年に聴いた清水勇磨さんと藤川志保さんのリサイタル(記事)でも、チケットは4,000円だったと思いますが聴衆は200名前後の感じで、赤字になったろうと思います。
では単純に値上げすればいいのか、というと、そうもいきません。
売上は料金×枚数の合計で決まるので、ベストの料金体系はあるかもしれませんが、それが毎回同じポイントであるはずがなく、全体として収益を挙げるのは簡単なことではありません。
これだけ名手が揃っても、興行を維持できないというのが、音楽界のいちばんの問題だと思います。
カネが全てではないのはその通りですが、名誉だけを維持して霞を食う訳にはいきません。
優れた音楽家は、その努力と資質に応じて対価を得るべきだと思います。
そうしなければ、新しい人が集まってこなくなり持続不可能になってしまいます。
私は勤労を重んじるタイプで、楽して効率よく儲けようという米国型銭ゲバ経営手法は嫌いです。
それでも、才能と努力により高められた芸術という、人間に不可欠な栄養素を提供してくれる人は報われてしかるべきと思います。
なんか、音楽と全然違う話になってしまいましたが、一言でまとめると、
『有冨さんも上田さんも藤森さんの編曲も素晴らしかった』
でした。
藤森さなさんの編曲をもっと聞いてみたいと思いました。
いい音楽を有難うございました。
後半は、ボウエンのヴィオラソナタ第1番ハ短調です。
楽器は前半と変わって1773年製のPietro Antonio Landolfiです。
黄土色と焦げ茶色の縞模様の木目仕上げです。
前半の楽器は、濃い色に仕上げられた、よく見るタイプでしたが、後半のものは、色塩梅が違い、幾分薄く見えました。
前半の楽器の音色は、ヴァイオリンのローエンドを拡張して低音寄りにした感じの深々とした音でしたが、後半の楽器は、高音の輝きを抑えた落ち着いた音でした。
低音は、前半のものよりもやや薄く、高音もやや低い感じで、自分が元々イメージしていたヴィオラの音に近かったと思います。
楽器によって随分音が違うと感じました。
昨年の東京音楽コンクールの二次予選では、ヴィオラは有冨さんだけでしたが、ヴァイオリンの出場者が多く、音色の違いに戸惑いました。
そのときは、演奏者による音色の差のほうが大きいだろうと思っていましたが、楽器による差も相当にあったのかもしれません。
今回は、同じ演奏者で別な楽器び音を聴いたので、楽器の個体による音色の差を比較することができました。
同じリサイタルで楽器を変えたのは、先日、上原彩子さんのピアノでもありました(記事)。
そのときは楽器が違いすぎたのと、スタインウェイの凄さを感じました。
ヴィオラの差はピアノほど劇的なものではありませんでしたが、音色が思っていたよりも大きく違いました。
個人的な好みでは前半のものでした(聴いた人にしか分かりませんが)。
あとは、アンコールを演奏して頂けました。
演奏はピアノもヴィオラも素晴らしくとっても"Brave!"でした。
やなか音楽ホールは、想像していた通りの広さ(狭さ)で、演奏者と客席との位置が近いので、直接音がよく聞こえました。
文化会館の小ホール等では、間接音が混じっていい雰囲気が付加されますが、このホールでは、直接音が大きく勝っているので、音は楽器から明確な音場定位で聞こえました。
また、ヴィオラの音が相当に大きく感じました。
直接音をこれほどまでにはっきりと聴いたことが無かったのでいい経験になりました。
それぞれの楽器に分解して聴こうとするオーディオマニアにはこちらのほうがいいかもしれません。
私は、もう少し間接音が聞こえるほうが好みです。
しかし、ホールの選定は、興行の企画でもあります。
名前が世界中に知れ渡っている演奏家ならともかく、いくら名手であるとは言っても、これから羽ばたいていこうという演奏家が何百枚ものチケットを売り捌くのは容易ではありません。
会場費は高価で、やなか音楽ホールの場合で、午後半日で82,000円です。
会場が100名収容でチケット代は2000円に設定されているので、関係者を含まずに100枚全部を売り切ったとして収入はたったの20万円です(正確にいえば消費税を除いて185,185円)。
これから準備費用、スタッフへの謝礼などを引いていくと赤字でしょう。
演奏者本人には、ひょっとしたら場数を踏むための修行の一環という考えもあるかもしれませんが、赤字とか、全然もうけにならないというのではよろしくありません。
私がよく利用する東京文化会館小ホール(653席)でリサイタルを開けば、会場費が459,000円かかります。
この他に会場スタッフの人件費も必要でしょう。
チケット代を同じく2,000円として300人分売れたとしても60万円の収入で、やはり赤字になるでしょう。
2016年に聴いた清水勇磨さんと藤川志保さんのリサイタル(記事)でも、チケットは4,000円だったと思いますが聴衆は200名前後の感じで、赤字になったろうと思います。
では単純に値上げすればいいのか、というと、そうもいきません。
売上は料金×枚数の合計で決まるので、ベストの料金体系はあるかもしれませんが、それが毎回同じポイントであるはずがなく、全体として収益を挙げるのは簡単なことではありません。
これだけ名手が揃っても、興行を維持できないというのが、音楽界のいちばんの問題だと思います。
カネが全てではないのはその通りですが、名誉だけを維持して霞を食う訳にはいきません。
優れた音楽家は、その努力と資質に応じて対価を得るべきだと思います。
そうしなければ、新しい人が集まってこなくなり持続不可能になってしまいます。
私は勤労を重んじるタイプで、楽して効率よく儲けようという米国型銭ゲバ経営手法は嫌いです。
それでも、才能と努力により高められた芸術という、人間に不可欠な栄養素を提供してくれる人は報われてしかるべきと思います。
なんか、音楽と全然違う話になってしまいましたが、一言でまとめると、
『有冨さんも上田さんも藤森さんの編曲も素晴らしかった』
でした。
藤森さなさんの編曲をもっと聞いてみたいと思いました。
いい音楽を有難うございました。
by mcap-cr
| 2019-02-26 07:04
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