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はこにわオーディオ工学研究分科会 (旧名: バスレフ研究所)

不適切表現がなかなかわからない

このところ改めて英文のTechnical writingを勉強しています(過去記事1過去記事2)。
こういう勉強をしていて困るのが不適切性がわからないことです。
綴の間違いや文法の間違いなんかは、頑張れば自分でも発見できますが、その記述はあり得るんだが妙な感じがする...というのは、自分で発見することがなかなかできません。
最も基本的な、伝わる/伝わらない、という視点で見れば、大抵は伝わるように書くことができますが、それでも逆の意味になってしまったり、焦点がぼやけてなんだかわからなかったりすることはよくあります。
会話の場合は、その場で指摘を受けて修正できますが、書くとなるとフィードバックを得るのに時間がかかります。

こういう話は、自分の頭を整理するために書いているので、申し訳ありません。

ある教材を読んでいたら、技術英語として、受動態の使い方がまとめられていました。
技術英語で受動態を使う場合は、
(1) 目的語を強調する
(2) 事実を客観的に記述する
(3) 自分や相手の非を控えめに表す
(4) 前の文とのつながりを考慮する

と4項目が示されていました。

技術文書では、受動態をなるべく使わないというのが基本であることは、別な教材にも示されていました。

(1)の場合は明確だと思いますが、それでも、その書き方でいいのか、もっと適切な表記法はないのか、と考えると頭が痛くなることがあります。
そこで例示されていた例文が
"The accident was caused by metal fatigue."(その事故は、金属疲労が原因である。)
= "Metal fatigue caused the accident."(金属疲労がその事故を引き起こした。)

これなんかはいいほうですが、どうして"metal fatigue"に"the"が付かないのかとか考えるとよく分かりません。
Weblioで調べると、metal fatigueは、不加算名詞となっているので、不定冠詞は付きません。
定冠詞はどうなのかな?よくわかりません。
イタリア語なんかでは、何にでも冠詞がつくのが普通みたいで、複数形にも不定冠詞が付くし、指示代名詞があっても定冠詞が付く(la mia madreなど)ので英語とは全然違います。
逆にロシア語なんかは冠詞が付かないのが普通だそうです。

(2)の事実を客観的に記述する、というのも難しい考え方です。
その文書には、こんな例が載っています。
After the test, the semiconductors should be left in the chamber for 30 minutes.(テスト終了後、半導体はチャンバーに30分放置してください。)

説明では、人を示す必要がないときには、物を主語にすることで、客観的に指示を与えることができるという説明があります。
簡単に命令形ではだめなんでしょうか?
Leave the semiconductors in the chamber for 30 minutes after the test.(テスト終了後、半導体はチャンバーに30分放置してください。)

米国政府の仕様書では、具体的手順は命令形で記述、一般的要求は受動態で記述(shall be ~)のように使い分けられているように思います。
もちろん、どちらでも通じることは間違いありませんが。

米国では、絶対的命令には"shall"を使うことが多いようで、政府文書などはやたらと"shall"が登場しますが"should"は、比較すると少数です。
ちなみに、ある米軍プロジェクトの仕様書全1554ページの中で、"should"は、84回しか登場しなかったのに対し、"shall"は、なんと5402回登場しました。
以下に例を上げてみました。

米国政府作成の仕様書の"shall"の使用例です。
Concealed and insulated piping shall be tested in place before concealing.
Submit for approval pressure tests reports ...
私訳:隠蔽される保温管は、隠蔽前にその場所で試験すること。
圧力試験報告書を承認用に提出すること...

まず、一般要件として、shall付き受動態による命令形を使用し、それを受けて、細目を命令形で記述してあります。
仕様書全体を通して読むと、この形が多いです。

一方、"should"の例です。
For flexible cellular foam the thickness should be 13mm instead of 15mm.
私訳:柔軟な発泡材については、厚みは15mmの代わりに13mmで良い

上の文で"should"を『で良い』と訳したのは、ここに書かなかったのですが、ここは保温材料についての説明であり、保温性能を確保するのが目的なので、厚みを15mmにすればオーバースペックにり、一向に差し支えないからです。

米国政府の"shall"がいかめしい要求を感じさせるのに対し、"should"はちょっと柔らかい感じです。

仕様書全体として見ると、既に書いたように、"shall"が強制的な一般要求を表す場合に使用され、その細目は、命令形で記述されています。

一方、"should"は、命令部分もありますが、この仕様書中では、その後に細目はなく、また、文書の要求を伴いません。

ついでに、もうひとつ"shall"の例を挙げます。
The following fire protection related items shall be U.S. products with U.S. testing labels as required. These items shall not be substituted with Japanese manufactured products:(以下に項目が列挙される)
私訳:下記消防関係の物品は米国の試験認定付きの米国製品であること。これらの物品は、日本製品で代替してはならない。

他の米国政府の仕様書もほとんど同じなので、"shall"の記述は絶対命令というのがそこでのルールになっているようです。

"shall"は絶対的命令、"should"は推奨程度に使い分けられるという説明をどこかで読んだような気がします。
いずれにしても、私が書いた文は、不自然でないのかは自主学習では分かりません。

本題に戻ると、(3) 自分や相手の非を控えめに表す、というのは、なるほど!と思います。
とてもいい文例が紹介されていました。

"Three errors were found in the report."
のほうが
"I found three errors in your report."
よりも柔らかい言い方だそうです。

"the"と"your"をさらりと使い分けているところに、この文を書いた著者のセンスを感じます。

(4) 前の文とのつながりを考慮する、というのも意外に難しいのかもしれません。
こんな文例でした。
"We have developed a new image recognition device for robots. The device is controlled by a camera mounted on the arm."(弊社では、ロボット用画像認識装置を新規開発しました。ロボットアームに搭載したカメラで、画像認識装置を制御しています。)

後半の文は、英文と和文の対応が難しく感じます。
カメラの中に制御回路が入っているとは思えない(すなわち、元の日本語が不適切である可能性がある)ので、たぶん、カメラで撮った画像を信号として使うのでしょう。
The device is controlled with the signal of a camera mounted on the arm.(画像認識装置は、アームに取り付けられたカメラの信号を使って制御されます。)

とするほうがいいような気がしますが、不自然でないのかは自信がありません。
たとえば、signalは、種類は多分1種類しかないと思いますが、常に違うはずなので、"the signal"ではなく"signals"が良いかもしれないし、"a signal"のほうが良いのかもしれません。
多分、"a camera"というのは、画像認識装置にモデルがいくつかあるので、"the camera"と特定しなかったのだろうと思いますが、そこに"signal"という概念を入れると、もう不定冠詞を使うのか複数にするのか定冠詞にするのが良いのか全然わかりません。
それとcameraとmountedの間に"which is"か"that is"という関係代名詞が省略されていますが、私には、こういう関係代名詞は省略しないほうが読みやすいです。
というのは、飛ばし読みするときには、関係代名詞が入っている方が、構文を読み誤りにくいからです。
こういうのは、読解能力を上げれば変わってくるのかもしれませんが、ネイティブのテクニカルライターはどうなのでしょうか?
ひょっとしたら権威者だって断定できないかもしれないし、ネイティブの意見が分かれるなんていうのはしょっちゅうのことです。
そういえば、以前に会社の英語研修のときに、前置詞を選択する問題があって、ネイティブの補助教員の、アメリカ人(2つの地区の2名)、スコットランド人(1名)、オーストラリア人(1名)が、全員違う前置詞を選択した、なんていうことがありました(その教材は捨ててしまったのが残念)。
こういうのが自主学習者の限界です。

以上のように、適切な文は分かるのですが、不適切な文は、どこが不適切なのかなかなかわかりません。
まずは通じるところから、なのですが、専門に研究しない限り、その先は険しい道のりのようです。


by mcap-cr | 2019-04-02 06:37 | 外国語 | Trackback | Comments(4)
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Commented by muuku at 2019-04-02 18:01 x
翻訳のことは全く分かりませんが、「(3) 自分や相手の非を控えめに表す」と言う曖昧な表現から日本人が書いた教材であろうことが推測されます^^; 海外ではもっと白黒ハッキリした表現がされるのでは?
Commented by hiro-osawa at 2019-04-03 02:51
Metal fatigue って抽象概念みたいな言葉で、「その部品の、ここの金属疲労」みたいな話でなければ a も the もつかなくて良いみたいな感じですね

何かのやり方の手順書みたいなマニュアルだと「あなたは○○しなさい」の意味が強いので命令形になって、You please leave the chamber xxxなので Leave the chamber xxx となるのでしょうね
でも Leave xxxって「何かしろ」の命令というより「あなたは余計なことをするな、静かにほっとけ」の意味なので、対象物が自分で何かを進行するのを待ちなさいと言いたいときは The semiconductors should be left xxx で良いのでしょうか
この辺は日本語のマニュアルでも同様でしょうね

should と shall の使い分けは私は知りませんでした こういうの全部 should だと思ってました

ロボット用画像認識装置の文は少々問題がありますね
the arm が目的のロボットの可動部分の一部なのか、カメラが別の場所のアームから撮影してるのか、この文だけではわかりません
device が前後どちらの文でも画像認識装置のことらしいのですが、ロボットの動くアームに取り付けられたカメラで制御しているのなら、後の文の device はロボットのことを意味してるようにも見えます controlled と言ったらロボットの動きの制御ならぴったりですが、カメラで写した画像が認識装置を制御するという言い方はなんか変です この辺は英文と日本文のどっちが先か分からないので何ともですね 
Commented by mcap-cr at 2019-04-03 07:06
> muukuさん
私の経験では、他人に対する気遣いは、米国でも英国でもちゃんとしていると思います。
特に、間違いの指摘なんかは、先生と生徒の直接の場合にははっきり云うと思いますが、他の人がいたりするとやんわりと指摘するのではないかと思います。
この(3)は、自分にはすごく理解できます。
Commented by mcap-cr at 2019-04-03 07:21
> hiro-osawaさん
英語の名詞には、可算用法と不可算用法のどちらもできるものが多く戸惑います。
可算用法の場合には、不定冠詞を付けますが、不可算用法の場合は、不定冠詞を付けられないので、冠詞なしという用法がよく見られます。
それが、文脈や書き手の意図によって定冠詞が付く場合があるので、絶対的なルールがあるわけではないようです。

leaveの場合には、『放置する=そのままにしておけ=触るな』みたいな感じだと思います。
この場合には、前後関係の脈絡がありませんが、熱いうちは空気に触れさせるな、とか、急冷するな、くらいの意図なのではないかと思います。
受動態でも能動態でも伝わる内容は対して差がないように思いますが、受動態のほうがいいのか悩みます。

shallは、学校ではほとんど習わないので、受験にも登場しなかったと思います。
一説には、現在では、ほとんど使われていないというようなことを聴きましたが、公的な文書には、しっかりと使われています。
それでも、口語でつかうと、侍言葉しゃべる変な外人、みたいに見られるのかもしれません。
確かに政府文書以外ではshallを見た記憶がありません。

ロボット用画像認識装置の文は、私が感じたのと同じような不自然さを感じられたのですね。
たぶん、日本語の原文が変なので、英語にしても変なのだと思います。
日本の大会社のマニュアルはちゃんとしていますが、サービス子会社のサービス員の書いたレポートなんかは意味が変なことが多いです。
日本のエンジニアが優秀なのに末端の情けなさを感じることがあります。

生演奏を主とすれば、オーディオは箱庭で充分でしょう。
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