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はこにわオーディオ工学研究分科会 (旧名: バスレフ研究所)

ASD-STE100を読む

このところ、CDのリッピング(というより、整理してCDを探す必要のないようにすること)が必要だと思うようになったので、少しずつリッピングを進めています。
その過程でだんだん分かってきたのは、リッピングソフト(私の場合には"Asunder")を上手に使えば、かなりの手順が簡素化できるということです。
以前に書いたように、後からファイル名を変更したり、m3uファイルを書き直したりする必要はほとんどありませんでした。
m3uファイルはCD1枚毎にできるのが、セット物の場合は面倒ですが、これも"cat"コマンドで連結できるので、簡単になってきました。
また、オペラは別格で面倒ですが、曲ごとにひとつのフォルダにまとめてしまえば、1曲通しで聴けるようになるので、別な良さも出てきます。
もう少し手順を標準化できたら少しずつ2年位で全部リッピングしたいと思います。

全然関係ないお知らせです。
ウェブサイトで配布しているシミュレータのプログラムを最新のGCCでコンパイルするとエラーになることがわかりました。
main()

int main()
に変更すると、エラーがなくなります。
これを変更し、マニュアルを一部加筆したものに更新してあります。
更新は、下記サイトのみです。
http://mcap-cr.com/
FC2とWEBCROWのサイトでは更新していません。
このブログからのリンクは、何故か更新しようとしても拒否されるので、WEBCROWのままになっています。
申し訳ございません。

さて、今日の本題に入ります。
爺の手習いで英語を勉強していますが、米国のAMAZONで購入したThe Insider's Guide to Technical Writers by Krista Van Laan という書籍にちょっと良い情報があったので、紹介します。

ここで紹介されていたのは、Simplified Technical English という標準書です。
この標準書は、ASD-STE100というもので、宇宙産業のための英語の文書の書き方の標準書です。
ちょっと古いものが簡単にダウンロードできますが、最新版は、ASDのサイトに行ってリクエストすればメールで送ってくれます。
日本時間の午前中にリクエストを出しましたが、1時間もしないうちにメールで送ってくれました。

宇宙産業では、ちょっとした間違いが死亡事故に直結するので、誰でもが間違いなく理解できるよう記述方法を定めているのだそうです。
382ページありますが、これがなかなかおもしろいです。
使用して良い単語のリストがあったりします。

例文もなるほどと思います。
たとえば、下記のような表現は許容されていません。

For this procedure, make sure that one person is available for back up.
(私訳:この手順では、控えの作業員が1名いることを確認してください。)

STEでは、上記の文を下記のように書き直します。
Two persons are necessary to do this procedure.
(私訳:この手順を実施するには2名必要です。)

確かに、控えが1名というのは、1名いればその場に控えが来なくても良いようにも解釈できます。
そう解釈されてしまうと、1名作業になってしまい、事故の原因になるかもしれません。

こんなのもありました。

STE外の用法: The temperature must be adjusted.
STEの用法:   Adjust the temperature.

STE外の用法も一般には許容される書き方ですが、STEでは手順は命令形で書かなければならないそうです(関連記事)。
関連記事のところでは、半導体の試験片を試験語30分放置する指示を、受動態の例で書いている例を紹介しましたが、STEに従うと、私の思ったとおりの命令形で書かなければならないそうです(ホッ!)。

STEでは、同じ単語で動詞と名詞の使い方がある場合に、用法が制限されたりもします。

STE外の用法:Check the laptop battery.
STEの用法:Do the check of the laptop battery.

STEでは、"check"という用語を動詞として使ってはならないそうです。
確かに英語はその柔軟性の故に、構文がわかりにくくなりがちです。
解釈が複数あるのも珍しくありません。
わかりにくいのは、外国人だからという理由ではなくて、ネイティブの人にも同じことのようです。
確かに、以前一緒に仕事したことのある、元オリンピック強化選手の書いた英語は、何を書いているのか分からなかったことを思い出しました。

こんなふうにいろいろな制限がありますが、最初に挙げた書籍の著者は、STEを参考にしても良い、くらいの書き方で、STEを推奨している訳ではありません。
簡潔に明快に書くことができれば、必ずしもSTEに従う必要はないそうです。
STEに従うと、動詞として使っていはいけない単語を回避するために、"Do the check.."のように回りくどい言い方が必要になる場合もあります。
STEの説明を見ると、STEの用途を限定しているので、STEに完全に従えばいいという訳でもなくちょっとややこしくてどんどんドツボにハマっていく感じです。

こういう情報に接すると、日本の工科系学部での英語教育がいかに間違っていたかが分かります。
いまはどうなっているのかわかりませんが、私が教養部の頃は、文学とか哲学みたいな題材の本を順番に読まされて訳させられました。
それが、難解で構文が簡単にはわからないものでした。
学部に上がってからは、外国語は1ヵ国語だけになったので、英語を外してドイツ語にしたら、もっとちゃんとした先生にあたってまともな授業になりました。
工科系の学生には、STEみたいな英語を教えるほうがずっと役に立つでしょう。

日本語でもややこして意味のわからない文章をよく見かけるので、STEみたいな標準書が必要なのではないかと思います。



by mcap-cr | 2019-04-18 06:33 | 外国語 | Trackback | Comments(4)
Commented by muuku at 2019-04-18 09:39 x
文書の書き方の標準(ASD-STE100)ですか、さしづめドキュメント版ISO規格てきな感じでしょうか?宇宙産業がスタートなのでしょうが、グローバル企業は当然その重要性に気づいてもう標準書として運用しているのでしょう。いずれはISO規格に本当になるかもしれませんね。
これを読んで私も米国AMAZONや台湾、中国商社(日本AMAZONでの質問やトラブル時のやり取りで^^;)で翻訳機にたよるにしても最初の日本語の作成には出来るだけ簡便かつ明確をこころがけるしようと反省しました。
Commented by mcap-cr at 2019-04-18 12:22
> muukuさん
本当にそうですね。
自分で書いた文なんか日本語であってもあとで読むと変なことばかりです。
ASD-STE100が、まず、ISOとかになって、それを教材にすれば、英語の苦手感が多少なりとも減るのではないかと思います。
Commented by hiro-osawa at 2019-04-19 02:57
私もたしかに、工学部学生時代の教養課程の英語とドイツ語は古典文学みたいな教材だったと思いました
あれは役に立った気がしません
専門になるとTIだかナショセミだかのデータブックを教材にしたOPアンプの講義がありました でもこれは英語が目的ではありませんでした
要は専門分野講師陣の教授センセイ方が皆さん英語不得手なので対応できず、英語のセンセイを連れてくるとそれは古典文学の人だったり、時事英語というのは何十年も同じ講義をやってる老教師のジジ英語だったりで自分が分かってないことを知るチャンスはありませんでした
よその学校の様子は分からないし、最近はこの辺改善されてるんだか知りませんがどこも依然として似たようなものでしょうか
Commented by mcap-cr at 2019-04-19 06:13
> hiro-osawaさん
そういえば、英語の授業と関係なく、数学の教科書が英語のものだったので、それを読むのは英語力の多少の改善に協力したと思います。
いまのそうなのかわかりませんが、私の時代は、英語を落として留年するなんていう人もいました。よく落とす評判の先生に限って古典文学とか、構文の解読もままならないような教材を使っていました。おそらく大学の先生は、一度職についたら安泰だったので自助努力が足りなくてもやっていけたのだと思います。
文系の学部の教授とかに一般常識さえも通用しない人が目につくので、ひょっとしたら今でも大差ないのかもしれないと思っています。

生演奏を主とすれば、オーディオは箱庭で充分でしょう。
by MCAP-CR

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