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はこにわオーディオ工学研究分科会 (旧名: バスレフ研究所)

オーディオは、カネがかからなくなった

先日、『イタい人たち』と題する記事を書いてからいろいろと考えていました。
スピーカーを除くオーディオ機器の音の差は少ししかない、と考える人は、技術系の職に就いた人や理系の学者に目に付くようです。
オーディオヲタクの大半は、電線だけで音に劇的な違いがあると信じています。
こういう違いのひとつは、オーディオ評論家の説明を信じるかどうかです。
江川三郎さんが、電線によって音の違いがあるという説を唱えてから、最初は信じてもらえなかったものが、だんだん受け入れられるようになって今に至っています。

私は、電線の違いによる音の違いがあるという説は、今は全く信じていませんが、かつては常識として受け入れていました。
ですから、自分で電線を変えて音の違いを試聴した記録も残っているし、中途半端な価格のケーブル(コード)も未だに残っています。

電線による音の違いについては、落ち着いて考えてみて疑問を持ったので、説を信じなくなり、自分が使っている電線が何であるのかまったく気に留めなくなりました。
不思議なもので違いを気にしないと全く違わないように聞こえます。

オーディオ評論家の通説に従う電線による音の違いを、完全にフェイクだと思うようになったのは、電源タップによる音のアップグレードの記事が出始めてからです。

普通に考えれば電源タップなんかないほうがいいに決まっています。
あるほうがいいというのは、壁コンセントよりもプラグがしっかり刺さるタップを使う場合です。
私が使用しているサンワのテーブルタップは、このあたりが非常に優秀で、一度挿したら簡単には抜けません(記事)。
それでも壁コンセントに直接プラグを挿すほうが接触抵抗を含めても抵抗は小さいでしょう。
今では電力会社による音の違がるという説もあるし、電力会社の人を呼びつけてノイズ対策する人もいるそうです。
誤動作でもないのに電力会社って来てくれるのでしょうか?
こういうのが積み重なって電気料金が決まっています。
イタ過ぎる...

商用電源は、周波数が50Hzか60Hzに決まっているので、電線の周波数特性は関係ありません。
電源周波数のときにインピーダンスが問題にならない値ならいい訳です。
むしろ高周波ノイズをカットできるくらい周波数特性が悪いほうが、オーディオには向いているでしょう。
電源コードを替えて音が変わるという意見を知って、私は目覚めました。

以上のようなオカルトな話は別として、別な疑問があります。

どうして照明を消すと、音が大きく感じられるのか?

ついでに書くと、

どうして照明を消すと、音が良くなると感じるのか?


この説に反対の人はいるでしょうか?

これは、簡単な実験で確かめることができます。
日常の経験でも分かることでしょう。
視覚情報を取り去ってしまうと音がよく("良く"ではなく)聞こえます。
夜は、音を出したまま照明を切ると、

こりゃまずい!近所迷惑だ。

と焦るほど音が大きく聞こえます。
オーディオ的には何も変わらないのにです。

オーディオヲタクは、電源ノイズが減ったからだというでしょうが、別の部屋から電源ノイズが入っても問題ありません。

オーディオ機器を変えなくても、部屋を暗くするだけで音をグレードアップできる訳です。
つまり、何も変わらなくても音がものすごく違って聞こえるという現象がこうして確認できます。

視覚情報を無くすと、聴覚が研ぎ澄まされて世界が変わるようです。
逆に言えば、視覚情報を加えると耳の機能が悪くなるということです。
ケーブルを変えるのもアンプやCDプレーヤーを変えるのも視覚情報に影響します。

心理効果(と言えるかどうかは分かりませんが)が聴覚に影響を与える例です。
交換するだけで、真っ暗にするよりも音の違いが大きくなるケーブルがあったら聴いてみたいです。

私の経験でもっとも影響が大きかったのは、スピーカー再生技術研究会分科会のガラパゴスの会でのブラインドテストに先立って、自分でアンプの違いを聴き比べたことでです(記事)。
音量を同じにしたら、目を開けて見ていても、価格も年代も構成も全く違うアンプの音の違いが分かりませんでした。

私は、ブラインドテストのときは、操作担当になってしまったので、テストを受けることはできませんでしたが、そこでわかったことは、通常使うような条件では、高級機も普及機もアンプに関しては、気にするほどの差がないということでした。
つまり、音の差は感じるものの、気にしなければどうでもいい程度の違いです。
20倍の価格差があっても一聴して分かるような差がないことを実感しました。

いま、イタい人たちが目立つのは、こういう事実が、オーディオを趣味としない一般の人に知られてきたからでしょう。
オーディオに興味のない一般の人が『オーディオ機器を変えても目をつぶって聞くと音はほとんど変わらない』という情報を得ると、オーディオヲタクはイタい人に見えます。

楽器の違いも似たところがあります。
有り難い往年の銘器と現代の作品とでは、音の差は判別できるものの、楽器名や詳細を隠して比較すると、現代の名工の作品のほうが評価が高くなるそうです。

ブラインドではありませんでしたが、私も楽器の音の違いを実感しました(記事1記事2記事3)。
演奏会での楽器は素晴らしくいい音だと思っていましたが、往年の名器をみんなが持っているわけではありません。
いわゆる有名な楽器を使わなくても演奏者の腕が良ければいい音がするのだろうと漠然と思っていました。
しかし、過去の実績の研究の上に成り立つ現代の名工がつくる楽器が素晴らしいのは当然のことです。

そもそも、木材のエージングに200年も必要なのかという疑問があります。
ヴァイオリンやヴィオラのような薄い板材の応力緩和が定常に達するのに、数十年も必要なのでしょうか?
厚い板材でつくるスピーカーエンクロージャーでさえも、半年あれば十分な感じがします。
薄い木材で作る楽器のエージングに100年も必要あるとは思えません。
応力緩和が定常状態に達したら、しばらくはいい状態が続き、その後は劣化するだけだろうと思います。
現代の名工の作品がいにしえの名器をブラインド評価で上回るのは、楽器工のレベルが上がったことの他に、エージングが適切な期間内であるためと思います。

こういう細かな経験の積み重ねによって、私は、

- オーディオ機器は壊れるまで使う
- スペック上必要ない限り(私を含み、ほとんどの人の環境では必要ありません)は、高級機には手を出さない
- どうせオーディオは生音に敵わないのだから、コンサートやリサイタルなどの音楽会に投資する

という方針に変わりました。

もちろん、スペック上で必要なら話は別です。
33Hzの法則を超越した音を聴くにはそれなりの高級機が必要になります。
20Hzまでフラットに再生しようとイコライジングをかけると、ハイパワーアンプでもパワーチップが焼けてしまうそうです。
小口径でこれをやると、アンプのチップが焼ける前に、ヴォイスコイルが焼けてしまうでしょう。

でも33Hzの法則の範囲内で使うなら有名日本メーカー品のローエンドのアンプで十分です。
さらにいい音で聞きたければ、スーパーツィーターを使えばいいですが、これも、同じアンプで十分です。
最近のオーディオは、カネがかかりませんね。


by mcap-cr | 2019-05-31 06:20 | オーディオ一般 | Trackback | Comments(4)
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Commented by uta at 2019-05-31 06:41 x
僕はただ単純に
比較や測定するにしても、基準が自分の感覚では正確性に欠けること、言葉だけでは人と共有できないことを仕事上知っています
測定に関しては、測定器の特性や取り扱いを熟知していなければ確実な計測はできません

基準もなしに比較しても、過去の記憶と照らし合わせることは困難ですし
僕には全く自信がありません

イタイ人は感情的で自らは間違っていないと言いますし、数字的根拠よりも自分の感覚を信じます
もちろん数字的に表せない部分ももちろんあります

問題は、計測やブラインドテストなどの結果に妥当性という考えを持てるかどうかだと思います
Commented by mcap-cr at 2019-05-31 07:54
> utaさん
客観的な評価は何にしても必要ですが、趣味は全般に主観的評価が中心です。
オーディオの場合は、客観的な評価が可能なのにもかかわらず、大多数は主観的評価だけで語られています。
不思議なことに、客観的な評価で判別をできるも場合でも(スピーカーの個体差など)同じだと云うのに対し、客観的評価で差がなくても(ケーブルのインピーダンス特性など)全く違うと評価するのが、多数派オーディオマニアです。
視覚情報が聴覚に影響を与えている(思い込み)のは明らかだというのがブラインドテストの結果ですが、私は視覚情報があるだけで、聴覚を処理する脳の能力が下がっていると思います。
暗くすると音が大きく感じるのは、視覚情報を減衰させることで、代りに聴覚を処理するリソースが増えたためだと考えています。
基準無く、過去の記憶と比較するだけの多数派オーディオマニアの手法は、オーディオ趣味そのものの価値を下げているのだと思います。
そういう意味で最もオーディオの価値を落としているのがオーディオ専門家ということになろうかと思います。
Commented by muuku at 2019-05-31 19:45 x
最近のアンプは一昔前のものに比べそれ程に進化したと言うことでしょうか?
過去の高価なものが(大枚はたいて導入したのに)、最近の数万円と大差無いとなればクラシック的価値は別にしても感情的になるのも頷けることなのかもしれませんね。
Commented by mcap-cr at 2019-06-01 06:18
> muukuさん
20年くらい前から既に、聴く条件によっては、価格が違っても音に大差はなかったのだろうと思います。
自分の記憶では、バックロードホーンで低音を頑張るとアンプの差を感じましたが、それ以外だと大差なかったのでしょう。
低音を頑張るときは、比較するときも頑張ってヴォリウムを上げるので、音量の差はなかったろうと思いますが、音色の違いに集中する聴き方ではアンプの差は出ないだろうと思います。
いまもそうですが、アンプの差は電源の差と云われていて、ダイナミックレンジの大きな低音を頑張ったときにどれだけ安定して電流を流せるかというのが、アンプの質、出力の差でした。
音色は、そういう違いとは関係ないようで、アンプが無理しない状態なので価格が違っても大差ないのだろうと思います。
使い方によって、アンプの違いが大きく出るというのは、正しいのだろうと思います。
イタい人は、そういう使い方をしなくても、音の違いが大きいと考えているのでしょう。

生演奏を主とすれば、オーディオは箱庭で充分でしょう。
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