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はこにわオーディオ工学研究分科会 (旧名: バスレフ研究所)

ロイヤル・オペラのファウスト

オフ会の話題はまだまだ続くのですが、昨夕は、ロイヤル・オペラの『ファウスト』を聞きました。
今回聞いたのは、グノーのファウストです。
以前のオフ会で言ったことがあるあるのですが、私のオーディオは、『ファウスト』が満足行くレベルで再生できたらそこで卒業です。
そのためには部屋を作らなければいけないので、永遠に卒業できないと思いますが...

今回の引っ越し公演では、『ファウスト』の他に『オテロ』もあり、そちらも聴きに行く予定にしています。

一言で、『今回は凄かった...(ため息)』

指揮は、アントニオ・パッパーノ
ファウスト役は、ヴィットリオ・グリゴーロ(テノール)、メフィストフェレス役は、イルデブランド・ダルカンジェロ(バリトン)、マルグリート役は、レイチェル・ウィリス=ソレンセン(ソプラノ)です。
どの方を聴くのも今回が初めてです。
ロイヤル・オペラは、2回目で、前回はコヴェントガーデンの最前列で、『夢遊病の女』を聞きました。
夢遊病の女も良かったのですが、今回の『ファウスト』は、それを更に上回りました。

老人ファウストは、老いを嘆き、悪魔を呼ぶと、そこに悪魔メフィストフェレスが現れ、ファウストは悪魔に魂を売ります。
そして、マルグリートや、その兄ヴァレンティンも不幸に陥れていきます。
最後は、マルガリータが狂い死に、ファウストも地獄に落ちます。
こんなストーリーなのですが、なにしろ曲が見事。
『ファウスト』は、オペラの人気曲の中では、下の方だと思いますが、それは、聴いていない人が多いからだと思っています。
オペラといえば、プッチーニやヴェルディ、モーツァルトなどが人気曲の上位を独占していると思います。
そして、麻薬とも云えるワーグナーが別の高い山としてそびえている。
そんな中で、グノーは人気作曲家という訳ではなく、ファウストが偶に上演され、ごくたまに、『ロメオとジュリエット』が上演されるくらいだと思います。
『ファウスト』好きがどれくらいいるか分かりませんが、昨日、東京文化会館の公演を聴いた人は、『ファウスト』が自分の好みの演目の最上位に一気に上がったかもしれません。

オーケストラ、独唱、二重唱、三重唱、合唱が音楽に合わせて推移し、その間にさえも意味を持たせた曲、どこをとっても完璧な曲だと思います。
主役のグリゴーロの歌唱は見事の一言に尽きます。
声量が十分で、最後まで全然息切れしません。
メフォストフェレス役のダルカンジェロとのコンビも見事。
『ファウスト』では、一応主役がファウストということになっていますが、私は、音楽の主役がマルグリート、全体の主役がメフィストフェレスだと思います。
ファウストは、私にとっては脇役の存在だったのですが、グリゴーロは、ファウストがやっぱり主役かな、と感じさせてくれました。
メフィストフェレス役は、おそろしく難しい役どころだと思います。
というのは、CDで聴いても、なかなかいいメフィストフェレスには出会わないからです。
ダルカンジェロは、私のイメージの中での堂々たる主役を見事に果たしてくれました。
マルグリートは見事でしたが、私のイメージの中では、もうちょっと別の味が欲しい、ちょっと贅沢すぎますが。
その他の配役も合唱も素晴らしい。

通常は、海外のオペラの引っ越し公演は、日本から端役や合唱など諸々の人材を調達することが多いようですが、今回は、子供2名以外はすべて引き連れてきたように見えました。
こういうのはお金がかかりますが、きっぷが良いのでしょう。
舞台に関するこだわりもあったのでしょう。

時代背景は、絵画の印象派の頃に設定しているそうです。
マルグリートがキャバレー『地獄』のスタッフとして働いているというのもなかなかの演出でした。
極楽と地獄を音楽と舞台設定で瞬時に描き分けるのもオペラを総合芸術として深く愛しているからこそできるのでしょう。

全体的には、フランスの中にイギリスっぽさを感じるものでした。
兵士の感じもイギリスっぽく、それは、イギリス人が多いせいでもあるのかもしれませんが、それ以外にイギリスを感じさせるよう留意したのかもしれません。

今回の公演の中で特に良かったのは、バレエ音楽を省略せず、バレエ付きで演奏してくれたことです。
『ファウスト』は、バレエ音楽だけ有名で、全曲を聴いた人は多くないかもしれません。
バレエ部分には、すじを持たせる重要な意味があります。
しかし、多くの公演では、バレエ音楽を省略するという矛盾。
バレエ部分では、ファウストは、客席に背中を見せてバレエを見ているだけですが、その背中が重要です。
バレエ部分は、得した感が強いと思います。

反面ちょっと損するのは、パイプオルガンがないことです。
やっぱり電子オルガンではパイプオルガンの音は出せません。
電子オルガンでも曲の本質は出るのですが、パイプオルガンでないと、最後にマルグリートが天に召される荘厳な雰囲気が出ません。
そこだけは、オーディオの勝ちかもしれないなあ。

それでも見事、見事でした。

つい先日、同じ東京文化会館大ホールで、東京音楽コンクールの声楽を聴いたばかりです。
コンクール出場者の歌唱も見事でしたが、こういう長い曲を息切れせずに最後まで歌い遂げるのはまだむずかしいのかもしれません。
ロイヤル・オペラのような一流どころの歌手は、コンクール出場者が、全身全霊を込めて歌い上げた歌唱を3時間インターバル・トレーニングのように歌い続けなければなりません。
このレベルに達するのは、コンクールの優勝者をもってしても難しいことなのだと思います。
それでも、日本からも同じような大歌手が続々と出てくる日は近いでしょう。
そういう期待を込めながら、昨日の公演を楽しみました。


by mcap-cr | 2019-09-19 06:30 | 音楽・コンクール | Trackback | Comments(0)

生演奏を主とすれば、オーディオは箱庭で充分でしょう。
by MCAP-CR

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