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はこにわオーディオ工学研究分科会 (旧名: バスレフ研究所)

理科系の作文技術−木下是雄著

日本学術会議の会長が総理大臣を表敬訪問したようです。
話の内容は伝えられていませんでしたが、状況から想像すると、学術会議側の非礼を詫びに行ったのだろうと思います。
会員の推薦理由を尋ねられても答えにくい理由だったろうし、承認から漏れた人員についてその理由を開示したら学術会議側の都合が悪くなるおそれがあったのだろうと想像します。
承認できない人がいると総理に報告したのは公安を歴任した人だったことが報じられています(フェイクニュースの共同通信記事ではあるが)。
ただでさえ騒ぎすぎて藪蛇状態なのにここで更に騒いで多くの国民の目に触れたらお取り潰しは確実になるというおそれを感じていたと考えるとこの時期に表敬訪問に行ったという学術会議側の動きが納得できます。

政府が学術会議推薦の学者の一部を承認しなかったことを少し書いたら変な議論に進んでしまいました。

私も悪文をさんざん書いていますが、留意していることがあります。
私が就職したとき、会社の研修で一冊の本を渡されました。

理科系の作文技術−木下是雄著
理科系の作文技術−木下是雄著_a0246407_10401703.jpg
この本に大切なことが書いてあるから各自読んでおけ、というものでした。
その後紛失したので、自分で新たに購入したのが上記の版です。
いろいろな内容が書いてあるのですが、その中で重要なのが第7章『事実と意見』という部分です。

この中に以下のような記述があります。

1.私たちアメリカ人は他の国の人より機敏です。
2.このお話によると、ジョゼフは小屋に住んでいました。
3.私たちが読んだのはすばらしいお話でした。
4.この島の土着民は争いを好まぬおとなしい人たちでした。
5.彼らの国のことばはおかしな言葉です。


このなかのどれが事実でどれが意見か?
簡単ではありません。

上記の文のすぐ下に
事実とは、証拠をあげて裏付けすることのできるものである。
という記述があります。

ということで上記の5文を読むと、証拠をあげて裏付けできると考えられるのは、絶対的には、2.くらいで、その他は証拠をあげて裏付けできるのかどうかわかりません。

10月10日の記事で取り上げた過去記事(たったこれだけになった)は、証拠を挙げられるかどうかで事実と意見を分けて、意見の部分をばっさり切るとどうなるか、ということを書いたものです。

(1)学術会議推薦の会員を政府が否認した。
(2)学術会議推薦の会員を政府が否認したのは学問の地位を下げることである。
(3)学術会議の推薦を政府が承認するのは形式的なことであるため、政府は自動的に承認しなければならない。

上記の(1)〜(3)のなかで、事実と言えるものはどうでしょう?
(1)は証拠を挙げて裏付けられますが、他は意見です。
なぜなら反対意見があるので事実という位置付けはありえません。

反対意見がゼロなら事実か、というとそういう訳でもありません。
いずれ誤りが証明される可能性があるからです。
このあたりは、事実の定義にも複数あり、通説は事実として扱う、という意見もあります。
刑事裁判等は、事実と真実とを別なものとして扱っており、最終審で確定するまでは、起訴事実が真実になることはありません。
しかも刑事裁判では真実であるとは決していいません。
刑事裁判で無実というのは、単に真実でないという疑いの合理性が証明できなかったものを含みます。

新聞記者に、事実とはなにか?という質問をして、まともな答えを返せる人はほとんどいないでしょう。
事実とは、証拠をあげて裏付けすることのできるものである。』との定義に基き、報道を存在価値としてビジネスモデルを決めてしまったら、いまの新聞記事は内容が1/5くらいになってしまうでしょう。
私のように、報道機関の意見なんか知りたくないという人が新聞を買うと、80%くらいは見たくないものを見せられる訳です(広告含まず)。
そういう人には新聞なんかA4サイズでいいくらいです。
新聞を読むことは、新聞社の意見を読むことで、事実部分だけならインターネットで調べれば十分です。
インターネットだったら情報ソースを辿ればフェイクニュースもすぐに発見できますし。
テレビも同じで、いかに情報価値のないものを、聞かされ、見せられているかが分かります。
テレビ番組でもBS放送のものは、まだ比較的意見を分けて扱うものが多いですが、地上波のコメンテーターとか特定野党の面々は、どこをとっても事実と云えないものを事実として議論を始めるので議論が成り立ちません。

意見対意見、という構図をはっきりさせれば、テレビ討論などは成り立つのですが、彼らのやっていることは、意見の既成事実化ですから、まともに取り合っていたらもうXXXXになってしまいます。

ですから、『学術会議推薦会員の否認は学問を軽視しているので許せない』と云われても『どう学問を軽視しているのですか?』としか反応できません。
『学術会議の推薦会員のXXさんは、YYの分野で有力な国際論文をXX執筆して世界中の学者から引用されていて、他にもXXという実績があるのにそれを否認するというのは学術会議の価値を毀損するものだと思う...』
のように具体的に意見を書いて頂ければそこから追っていけるのですが、具体的でないと反応が難しい訳です。
そもそも承認されなかった人や承認された人の中には評価対象となる論文を全く書いていない人もいるそうです。
学者として全然評価のない人を推薦する学術会議って何?なんていうことにもなりかねません。

こういうことって、オーディオ議論もそっくりです。
学術的に否定された、だれかの意見を事実として議論する。
それでは話が噛み合わないでしょう。

私のページやブログに書いてあることは、ほぼ100%が意見です。
例えば33Hzの法則(リンク)なんていうのも勝手な意見に過ぎません。
当然そう思わない人がいるでしょうし、いろいろな意見があっていいのだと思っています。
書くのは自由で、単に個人の意見です。
そう思わない人にまで押し付ける意図はありません。
長岡説も同じことで、長岡先生がそう云ったから事実、という訳ではありません。

オーディオの測定結果にしても、JISなどの公的規格を満たした測定手順で、トレーサビリティが確保されていれば、事実として良いですが、個人が自分で実験したようなものは、追試験されるまでは事実として扱うことはできません。
(注:トレーサビリティとは、比較する原器が国際基準にトレーサブルなだけではなく、手順についてもISO17025の基準を満足し、精度と不確かさが定量化されている必要がある。)
個人の測定は、参考情報としては価値がありますが、これ間違ってるな、と感じるのもあります。
自分の試験結果も怪しいので全部削除しました。
追試ができなければSTAP細胞と同じことになってしまいます。

事実として扱われていても、怪しいことは結構あります。
例えば、『人間の可聴帯域は20Hz〜20kHzである』というのも私はあくまでも通説にすぎないと考えています。
そもそも20Hzをひずみなく再生できる装置を私は知りません。
現在には十分に低歪で再生できる装置があるかもしれませんが、この通説ができた当時にそんな再生装置が本当にあったのでしょうか?
『歪=高調波』があれば、もっと高い周波数を同時に聞いていることになる訳で、結果として採用することに無理があるでしょう。
この通説は事実かもしれませんが、証明は難しいでしょう。
高域についても、被験者をきっちりとプロファイリングし、不確かさを明示しなければなりません。
通説は通説、多分事実なのでしょうが、証明されていなければ意見として扱うべきでしょう。

情報はそれが事実か意見か、分かるように書き分けているものは信頼性が高いですが、そうでないものはウソだと思って見るほうがいいでしょう(おっと危ない。自分に返ってくるか。)。
すくなくとも新聞記事は、明確に事実と意見を書き分けていないし、むしろ自分の意見を真実として読者に誤認させようという意図(意見の既成事実化)を感じます。
そういうものはそういう読み方をするしかないでしょう。

by mcap-cr | 2020-10-17 07:49 | 科学・工学 | Trackback | Comments(2)
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Commented by tincan at 2020-10-17 11:10 x
この本、よく本屋で見かけます、隠れた名著ということで有名な本ですね。
私は理科系の素養が無いものですから無縁の本だと思って買わないでいたのですが、
会長の案内を読むと私のようなものにも理解可能な、面白そうな内容です。
確かに理科系の方の文は、事実と意見を明確に分ける事は必須事項なのでしょう。
文科系の作文は両者を巧妙に混合させて読者を著者ワールドに引きずり込み、
妙に納得させてしまう、そんなものを作文力とかいっています。

文科系者の作文技術とは何だ、と訊かれてあまり良い言葉も出てきませんが、
分かりやすさと説得力ですかね。しかし理科系の方から見ると、分かりやすさと説得力といっても誤魔化しと詭弁力ぐらいにしか思われなさそう(笑)文科系は法科を除き
客観的な分析実証方法は重要視してないからでしょう。ホントは重要ですが。

周囲に作文力を上げるにはどうしたら良いか?などと訊かれることがあります。
わたしは迷わず、センテンスを短くすることを勧めます。
世の中には、長い文章を書けることがインテリの証明みたく思われていますが、とんでもないです。
大学入試の国語の問題文を見てください、長いばかりで何を言いたいのかサッパリわからない。難解だから悪文だから入試の問題として採用されるのだ、というジョークにもなんだか説得力があります。100人が読んで全員が正しい意味理解をする文章ならば全員満点で入試問題の意味が無い、ということです。
私が勧めたいのは志賀直哉ですね。短いセンテンスで心に食い込んでくる文章です。
・・・・だった。・・・・だ。・・・だ。と、ダダダが短く連続しがちなので機関銃の文章と呼ばれているそうですが(笑)
一昔前NHKの番組でプロジェクトXという番組が人気を呼んだのを覚えていらっしゃるでしょうか?あの中で妙に説得力のあるナレーションが出てきますが、あれが志賀直哉流なのです。センテンスが短く心に食い込んでくる話し方。あれで何回泣かされたことか。番組の趣旨内容を良く把握した構成だと感心しました。
Commented by mcap-cr at 2020-10-17 14:51
> tincanさん
『理科系の作文技術』は、私の購入時は563円(消費税3%の時代)でしたが現在は幾分価格が上がっているだろうと思います。
それでもお買い得なことは間違いありません。
引き合いに出された法学系は、専門用語が多く、一般には難しいものが多いですが、たちの悪いライターは、専門用語を並べて分かりにくくします。
法学系の著者も専門用語だけでなく一般用語も織り交ぜている人が理系の著者と同じような感覚があるだろうと思います。
入試に出る国語の読解は、やめてほしいですね。
以前、よく出題される小林秀雄という人が、東大の入試に出されたので自分で解いてみると自分の答えは正解ではなかったと書いていました。
分かりにくく書いた結果、ちゃんと理解してもらえない、結果として因果が自分に返ったともいえますが、執筆者本人が正解できない読解問題って何でしょう?
英語なんかも同じで、大学の教養過程で読まされる英文なんか、ふつうのネイティブの人が読めないレベルです。
英語ネイティブの人の読解力とか作文力はちょっと想像と違うので驚きますが。
志賀直哉、覚えておきます。
最近は出張にいかないので本を買う機会が減ってしまいましたが、たまには読書も良さそうです。理系の本は買った途端にスキャンして捨ててしまうのですが...

生演奏を主とすれば、オーディオは箱庭で充分でしょう。
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