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はこにわオーディオ工学研究分科会 (旧名: バスレフ研究所)

超高音の必要性

ヒューマニエンス「“聴覚” 世界をつかむ精緻な進化」
[NHKBSプレミアム] 2020年11月23日 午後11:45 ~ 午前0:45 (60分)
を録画して見てみました。
番組は、導入部はどうでも良さそうなところで始まり、次に注目すべき調律師の話が出てきました。
経験40年の優れた調律師が、音色を調律するという話は興味がありました。
経験40年ですから、耳の機能はそこそこ衰えているはずですが、微妙な音色を聞き分ける。
最初、テレビのスピーカーで聴いていてよく分からなかったので、自分のメインスピーカー(Feastrexの励磁型Nf5Exを搭載したMCAP-CR型)に換えて聴き直すと違いが分かりました(ホッ)。
とは云っても、普段使っている更にコンパクトな箱庭システムでその差を検知できるかどうかは分かりません。
それほど微妙な違いです。
調律が狂っていたとか、そういう単純な話ではないので、判別にはちょっとした訓練が必要でしょう。
あと面白かったのは、指揮者の佐渡裕の話で、コンクールのときに2つの楽器が入れ替わった差を違和感として感じて、指摘したら拍手が出たそうです。
こういうのは、作曲家ごとに曲を研究して各パートにその楽器を使ったかを感じていたので、聞き取ったのだろうと思います。
耳と楽譜だけを手がかりに、初めて聴いた曲でやられてしまうとさすがの佐渡さんでも難しかったでしょう。
番組ではコメントがありませんでしたが、耳がいいのは、バックグラウンドの知識があるからだろうと思います。
何年か前に話題になった、マーラーの交響曲の演奏のなかのハープを聞き取れるか、というのもスコアを読める人だったら分かる、聴くだけの人は判別不能だろうと思います。
耳だけで聴いて、その旋律を楽譜に書ける人はいないでしょう。

番組では、動物の周波数音域等を説明したり、耳の形を擬似的に変える、音の方向のが認識できなくなることをデモしたりしてそこそこ興味を引く内容でした。
東大の岡ノ谷教授の、20,000Hz以上を皮膚で感じているという意見は、番組で紹介された部分だけのロジックでは受け入れ難く思いました。
同教授が番組で紹介したロジックでは、振動を受容するとそれが耳→脳に伝わると説明しており、結局耳を通過するのに、なぜ耳で検知できない超音波が皮膚で検知されるのかの説明にはなっていませんでした。
個人的な実験でも、コーン型のツィータの低域をコンデンサでカットし、カットオフ周波数を上げていくと、耳でシャカシャカ聴こえる状態でも振動板の触診では振動していることが分かりません。
耳で聴こえても触診で検知できないのに、耳で聴こえない周波数を肌触りで検知できるとは、とても思えません。
番組なのでかなりの部分をカットされており、重要な説明が削られていたのでしょうが、自分は、こういう説を信じる気にはなれません。
医学の研究者の説であればもっと聴いてみたいですが、この番組のように、ロジックが不完全だと信じる気にはなれません。
そういえば、番組の最初のほうで、指揮者の佐渡裕さんが、CDとLPとの音の違いに言及していて、LPの音のほうが好ましく感じると発言していました。
しかし、その理由を、単純に『LPのほうが周波数音域が広いから』として結論づけようとした番組の浅薄さが、気になりました。
LPのほうがカタログデータ上は高音域が広いことにはなっていますが、マスターテープ(メディア)やマイクロホンの仕様に左右されるので、説明にはなっていません。
当然ながらLPレコードのすべてに超音波が収録されている訳ではありません。
むしろCDよりも周波数帯域が狭いLPレコードのほうが多いでしょう。
私は、アナログのほうが音が悪いという気はありません。
しかし、良いともいいません。
どちらがいいか、自分には判断できません。
自分の演奏の好みを判別できればそれで合格です。
それでもLPレコードのほうが良いと感じる人がそれなりの数いるということは、周波数特性だけで論じられる問題ではないと考えるのが自然です。
番組はそれだけではなく、胎児が音を聴いているとか、いろいろな学説の説明があり楽しめました。

我ながらひねくれていますが、スーパーソニックの理論などは、こういう説の切り取りでできているのだろうと思いながら見ていました。


by mcap-cr | 2020-11-25 07:28 | オーディオ一般 | Trackback | Comments(6)
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Commented by tincan at 2020-11-25 09:52 x
視聴ありがとうございます。ネットでも見かけましたので、アドレスを紹介いたします。まだ見ていない方にお勧めします。
https://www.dailymotion.com/video/x7wtwes
オーディオファンなら興味津々でしょう。

>次に注目すべき調律師の話が出てきました。

三本の同音程のピアノ線のうち、一本か2本がチューニングずれている、というやつですね。
こころなしか施術後はスッキリ澄んだ音になりました。僅かの変化ですが。

>指揮者の佐渡裕の話で、コンクールのときに2つの楽器が入れ替わった差を違和感として感じて、指摘したら拍手が出たそうです。

こりゃ西洋版の「ドッキリ」ですね。教養も素養もある専門家も意地悪です。もっとも色々注文を出す立場の(上から目線)指揮者ですから、試されるのもしかたないかも(笑)

>番組では、動物の周波数音域等を説明したり

私はキツネが雪の下何十セン下のモグラを耳で探知して、ジャンプ、一撃で咥えてしまう、その方向探知の精密さ聴覚にビックリしました。とは言え私もFMのシャーノイズには敏感過ぎて自身が困っておりますので気持ちはわかります。気になるのです。

>コーン型のツィータの低域をコンデンサでカットし、カットオフ周波数を上げていくと、耳でシャカシャカ聴こえる状態でも振動板の触診では振動していることが分かりません。

これは初めて伺いました、肌や触感では高調波が感知できない証拠ですね。
東大の先生もいい加減なことを言うなぁ。オカルトオーディオのお先棒担ぎは辞めて欲しい、権威者は確実なことだけ表明せよ、といいたくなる。

Commented by tincan at 2020-11-25 09:52 x
アナログとデジタルについて
佐渡裕さんは世の中のアナログファンを慮って適当なことを言っておりましたが、私は最終戦争においてデジタルはアナログに勝つと信じております。
デジタルは人類を月へ連れて行った優秀な技術です。人を裏切るはずがない。現在のところアナログは、人間の耳を、その疑似力でウットリさせる惑わせる技に長けています。しかしこれからの宇宙時代デジタル技術無しでどうやって進展発展出来るでしょう?
探査機パイオニアにアナログレコードを積んだのはカールセーガンの戦略なのです。人類は遅れた生命体であると、見つけたエイリアンに信じこませ、おびき寄せて一網打尽にする、実はカールはエイリアン待望論者だったのです。どこかの会社の廻し者かも(笑)
Commented by mcap-cr at 2020-11-25 10:52
> tincanさん
調律の話は、一部のチューニングずれとは違うように感じました。
一部のチューニングずれだったらもっとわかりやすいと思うし、FFTアナライザを使えば定量的に調律できるはずです。
番組では、ハンマーのフェルト部分を調整していたので、ハンマーが叩くタイミングの時間差による音色の違いを聴いていたのだろうと思います。

キツネのシーンは、何度もやって成功したところを写しているだけで、実際には確率100%で獲物を捉えられる訳ではないだろうと思います。
よく見るコブラとマングースの戦いでも現実にはコブラが勝つこともあるそうです。

コーンツィータの実験は簡単にできるので是非お試しください。
あの100円のユニットだと、0.47μFくらいでもシャカシャカと音は聴こえますが、触っても振動は分かりません。へそにでもくっつけたら分かるのかもしれませんが(たぶん分からないとは思うが)、音は服着て聴いている訳ですから肌の露出した部分で感知できなければ超音波を肌で聴いている証明にはならないと思います。
音に関する研究は、脳による処理の部分が大きいので、見えていない現象が多く、それがオーディオの神話になるのだと思います。すくなくとも、『これはハイレゾです』と云われれば、マインドコントロールの効果はあるでしょう。
研究者は、発言を切り取って利用されることのないよう気をつけなければならないと思います。
Commented by mcap-cr at 2020-11-25 11:04
> tincanさん
アナログ対ディジタルですが、私は共存していけると思っています。
スピーカーシステムはアナログにならざるを得ないので、デジタルは信号伝送、増幅、記録に限り使える技術だと思っています。
アナログディスクが絶対に優れているのは、ディザリング効果で、無音の状態でも振動板が動いているので、常時動摩擦の状態になり、摩擦係数が低くなる現象です。
ソニーも同じことを書いていました。ディザリングは、耳に聴こえない周波数で揺らしておけるのがミソです。疲労試験機などは、高周波数でディザリングをかけますが、アナログオーディオの場合は低周波でのディザリングになりますね。
アナログはノイズや歪も大きいので、これもディザリングに貢献するし、歪によって高域が延びているように誤解させます。
こういう物理現象を論じないで、超高域の議論にすり替えるのは、詭弁だと思います。
アナログは音が悪い故に音が良く感じるのだと思います。
Commented by tincan at 2020-11-25 16:42 x
ピアノの調律の話は、最初はチューニングのずれ(調律)の話で、フエルトをチクチクやってたのは坂本龍一向けに音色を柔らかくするため、と承知していますがどうでしょう。もう一度動画を見てみます。

>キツネのシーンは、何度もやって成功したところを写しているだけ

そうか・・・、そういうこともありますね。奇跡的な映像を見るとすぐに興奮してしまいます。いけません。会長は冷静ですね、最近詐欺が横行しておりますが、会長を騙すのは難しそうだ(笑)

>ディザリング効果

これは初めて聴きました。調べてみるとそういう効果があるのですね。色々勉強になりました。
Commented by mcap-cr at 2020-11-26 06:46
> tincanさん
ピアノの調律の話は、説明がわかりにくかったので印象でしか覚えていませんでした。
ただ、複数弦の周波数の違いによる音色の変化であれば判りやすいと思うので、わざわざ取り上げることもないかと思いました。
結果としてグラフのピークの長さ(なぜ横向きにしたのかよくわからない)が変わっていたのが周波数とは関係なさそうに見えました。グラフの見方を説明してほしかったのですが、なにしろ、印象付けが全てだと思うので...
坂本龍一用のチューニングだったかもしれません。

キツネが獲物を捉える動作は、Pinterestで何度か見ていましたが、そこでは獲物を獲っていなかったので、この番組で、獲物とりの動作だったことを初めて知りました(というのが真相です)。
冷静に見ていたわけではありません。

ディザリング効果は、調べると、デジタル処理のことばかりですが、物理的説明はこのブログの過去記事にあります。
https://mcap.exblog.jp/238941967/
クーロンモデルも同じく過去記事にあります。
https://mcap.exblog.jp/23889922/

生演奏を主とすれば、オーディオは箱庭で充分でしょう。
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